スポーツ茶論

決勝の代替試合は美談か 橋本謙太郎

全国高校選抜大会決勝の代替の練習試合で、東福岡の突進を2人がかりで止める報徳学園の選手(赤黒ジャージー)=3月31日、埼玉・熊谷市(報徳学園提供)
全国高校選抜大会決勝の代替の練習試合で、東福岡の突進を2人がかりで止める報徳学園の選手(赤黒ジャージー)=3月31日、埼玉・熊谷市(報徳学園提供)

美談か、暴挙か、それとも大人の知恵なのか。何とも不思議な試合だった。3月31日に埼玉県熊谷市で行われた東福岡(福岡)と報徳学園(兵庫)の両高ラグビー部による練習試合のことだ。

両チームはこの日、全国高校選抜大会決勝で対戦するはずだったが、前日夜に東福岡が出場を辞退。決勝は中止になり、不戦勝で報徳学園の優勝が決まった。東福岡の対戦相手から新型コロナウイルス陽性者が出たことを受け、大会実行委員会は東福岡に辞退勧告し、同高が受け入れたと発表された。その両チームが、もともとの決勝開始時間に会場予定地だった熊谷ラグビー場近隣のリーグワン、埼玉パナソニックワイルドナイツの練習場で試合を行った。大会終了後の練習試合ではある。だが「試合ができるのならなぜ決勝を中止したのか」「公式戦ができないのになぜ練習試合はできたのか」。そんな疑問が残った。

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日本ラグビー協会によると、東福岡が1回戦(3月25日)で対戦したチームに陽性者が出た。この大会では発症48時間前以降に対戦したチームは濃厚接触の疑いがあるとしており、東福岡はこれに該当。濃厚接触者には自治体から7日間の活動自粛が求められていることから、専門家と協議のうえ、東福岡に辞退勧告したとしている。

「できれば試合をさせてやりたい」との声が出るのも不自然ではない。東福岡は3月30日に検査で全員の陰性を確認。報徳学園側などと調整し、試合が行われたという。大会実行委からは中止を求められたが、関係者は「練習試合は何とかやらせてくださいとお願いした」と語る。試合は37―10で東福岡が勝った。

純然たる美談として受け取るには問題が残った。もしこの一戦で感染が拡大していたら、日本協会のガバナンスが問われる事態になっていた可能性もある。日本協会の岩渕健輔専務理事は「(中止の)一番の理由は選手の安全が担保できないという事前に決めたルール通り。今後そのようなことがないようにしていただきたい」と、〝代替試合〟に苦言を呈した。

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