宮城県の上下水道と工業用水の運営が民間企業に委託され、1カ月が過ぎた。人口減などで水需要が縮小する中、民間の知見や技術を活用し、浄水処理に使う薬品など資材の一括購入でコスト削減を図る狙いがある。事業者側は「安心で廉価な水の供給」に徹する構えで、トラブルの報告もなく順調で静かな船出となった。一方、水質低下などを懸念する市民団体は「再公営化」を求める構えを崩さない。(奥原慎平)
「悪い情報もきちんと発信し、隠し事をしない会社を目指す。約束した水質と水量を安定的に提供し続けていく」
4月12日、宮城県白石市の県仙南・仙塩広域水道事務所で開かれた事業開始式で、水道事業の運営権を譲渡された特別目的会社「みずむすびマネジメントみやぎ」(仙台市)の酒井雅史社長は、記者団に淡々と決意を語った。同席した村井嘉浩知事は「(県などが)水質と経営をチェックしていく。県民に不安を与えるようなことは一切ないと思う」と強調した。
みずむすびは水処理大手、メタウォーター(東京)など10社で構成。県の水道事業を4月1日から20年間にわたって運営する。宮城県では既に平成2年から浄水場などの運転管理を民間が行っており、今回は薬品や資材の調達、設備の修繕・更新工事の業務を、みずむすび側が新たに担う。県は関連施設を引き続き所有し、水質検査や水道管の維持管理を行う。