【ソウル=桜井紀雄】韓国のいわゆる徴用工問題と関連し、元朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊の女性らへの三菱重工業に対する賠償命令が確定した訴訟で、中部、大田(テジョン)地裁は、原告側が韓国内で差し押さえた同社の資産である特許権2件の売却命令を新たに出した。韓国メディアが2日、伝えた。
命令は4月29日付。三菱重工は即時抗告する見通し。この訴訟では、別の原告2人分の特許権と商標権について昨年9月に売却命令が出された。現在は同社が不服として最高裁に再抗告している。最高裁で命令が確定すれば、日本政府が「レッドライン(越えてはならない一線)」とみなす資産の現金化に向けた手続きが可能となる。
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)次期政権は、文在寅(ムン・ジェイン)政権が徴用工訴訟の解決を半ば放置することで悪化した日韓関係の改善に積極的な姿勢を示す。ただ、具体的な解決措置が講じられなければ、年内にも資産売却が現実化し、関係改善が遠のく恐れもある。
三菱重工などに対して2018年に賠償命令が確定した徴用工問題について、日本政府は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で一貫している。