トップ不在1カ月、交錯する思惑と見えぬ着地点 大阪公立大病院

大阪市立大と大阪府立大が統合し、4月1日に開学した大阪公立大の医学部付属病院のトップが決まらない。病院長選考会議で選出された候補の任命を大学法人側が拒否し、対立は激化。新型コロナウイルス禍の収束が見通せない中、リスク管理の専門家は「トップ不在では危機的事態に十分に対応できない」と早期の幕引きを促すが、泥仕合ともいえる状況に着地点は見いだせない。

病院長不在で船出へ 大阪公立大病院

任命拒否の理事長、「苦渋の決断」

「この天下り的な人選にストップをかけられるのは私だけだ。苦渋の決断だった」。4月下旬、公立大学法人大阪の西澤良記(よしき)理事長が産経新聞の取材に応じ、任命拒否を振り返った。

選考会議が選出したのは3月まで大阪市立大学長だった荒川哲男氏。選考規程は病院長の資格として「付属病院の明確なビジョンを持ち、強いリーダーシップを発揮できること」など8要件を定めているが、影響力の強い現職学長が付属機関の病院長に立候補すること自体、「想定外」(西澤理事長)だった。

選考会議の委員7人のうち4人は医学部関係者。西澤理事長からすれば、荒川氏の選出は結果を見る前から明らかだった。「このままでは古い体質から抜け切れない」。ガバナンスを重視し、選考会議に候補の再選考を求めたと明かす。

「待った」をかけられた選考会議側は強く反発した。選考会議の河田則文議長は「選考は規程に沿って行われた。選考会議が選出した候補の任命が拒否されたケースは聞いたことがない」との見解を示し、西澤理事長の言動は任命権の乱用だと批判する。

3月22日に再選考を依頼された選考会議は、1週間後の29日に再び荒川氏を推すことを決めた。

かたくなともとれる態度の裏側には、病院が抱える法人側への不信感がある。医学部幹部は「法人が病院の人事や予算に介入しようとしていると感じる。こういうときに荒川先生のような、大学の仕組みを分かっている人が病院サイドにいてほしい」と明かす。

「選考過程で理事長から働きかけ」 中立性に疑問符

そんな中、西澤理事長の中立性に疑念を生じさせかねない事態も起きている。

選考プロセス検証のため、法人理事らでつくる役員会が実施した聞き取り調査に対し、選考会議の一部委員が「選考の過程で理事長からの働きかけがあった」と証言。役員会は後に「理事長の言動は結果として選考プロセスに少なからず影響を与えた」と認定し、西澤理事長に反省を求める勧告案を承認した。

西澤理事長は取材に「手を入れざるを得なかった」と認め「ただ2、3人に出馬を打診したほかには、委員に対して状況を説明しただけだ」と弁明した。

荒川氏は「新型コロナウイルス禍で地域の中心となる病院のリーダーシップが求められる中、混乱が続けば社会的責任も問われる」と訴えているが、西澤理事長は「今後も荒川氏を任命することはない」。

激化する対立の着地点は見えず、トップ不在の異常事態は当面続く見通しだ。

「組織が生まれ変わるタイミングでのトップ不在の影響は計り知れない」と話すのは、関西大の亀井克之教授(リスクマネジメント)。法人は副院長の1人を病院長の職務代理者に任命しているが「あくまでその場しのぎ。思い切った改革には踏み切れない」(亀井氏)。現状では納税者や患者、病院関係者が「置き去り」になっているとも指摘し、早期解決が不可欠と訴えた。(花輪理徳)


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