製鉄所からの市民退避 籠城部隊殲滅への下準備か

ウクライナ・マリウポリのアゾフスターリ製鉄所からの退避作業で、手助けを受ける女性=1日提供(DAVID・ARAKHAMIA/アゾフ連隊提供、ロイター=共同)
ウクライナ・マリウポリのアゾフスターリ製鉄所からの退避作業で、手助けを受ける女性=1日提供(DAVID・ARAKHAMIA/アゾフ連隊提供、ロイター=共同)

ロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナ軍部隊や市民約1000人が籠城してきた東部マリウポリの製鉄所からの市民の退避が1日、始まった。食料などの欠乏が伝えられていた中、多数の市民が犠牲となる最悪の事態は避けられる見通しが出てきた。ただ、市民の退避はマリウポリの完全制圧と残存部隊の殲滅(せんめつ)に向けた露軍の下準備である可能性が高く、なお先行きは予断を許さない。

露国防省は市民の退避を「人道的措置」だと主張。しかしロシアは、製鉄所内に立てこもる市民について、籠城部隊に「人間の盾」として利用されてきた-との立場を取っている。市民の退避が進み次第、露軍が部隊の掃討に動く可能性は排除できない。実際、ウクライナメディアによると、ウクライナ軍は1日、市民の退避後に露軍が製鉄所への砲撃を再開したと発表した。

ロシアは4月21日、マリウポリの市街地の制圧を宣言。一方でプーチン露大統領は、2000人規模の部隊が地下に籠城する製鉄所への突入作戦を禁じる代わりに、厳重な包囲をショイグ国防相に命じた。その後も露軍は製鉄所への砲撃を継続し、地上施設をほぼ完全に破壊。プーチン氏は突入による兵力の損耗を避ける思惑だとされてきた。

ただ、残存部隊の大半はマリウポリを本拠とする「アゾフ大隊」に所属している。同大隊は、2014年からウクライナ東部で続く親露派武装勢力とウクライナ軍との紛争の最前線を担い、ロシア側が「親露派住民を虐殺してきたネオナチ」だと一方的に敵視してきた。ロシアが今後、同大隊の投降を認めない可能性すらある。

アゾフ大隊は露軍によるマリウポリの制圧宣言後も、露軍への反撃を公言してきた。ロシアは製鉄所から市民を退避させた上で、アゾフ大隊を殲滅し、製鉄所を包囲していた部隊を他の戦線に差し向ける方針とみられる。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、部隊を全滅させれば「停戦交渉から撤退する」と表明。マリウポリを巡る両国の駆け引きはなお続く見通しだ。

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