治安最前線~新任

(1)誇りを胸に訓練で磨く「総合力」 機動隊の新女性隊員

皇居周辺などの警備に当たる藤嶋巡査部長と山口巡査長=4月末、東京都千代田区(大渡美咲撮影)
皇居周辺などの警備に当たる藤嶋巡査部長と山口巡査長=4月末、東京都千代田区(大渡美咲撮影)

「動かないという意識でやれば動かない。気持ちが動作に現れる」

「おう!」

3月、東京都目黒区にある警視庁第3機動隊の隊庭では、配属されたばかりの新隊員約30人が基本動作の訓練に励んでいた。集団で動くための基本隊形は、崩れないよう手の位置や足のラインなど細かい部分までそろえなくてはならない。

2週間後には警備部幹部の前で訓練を披露し、翌日から警備の現場に立つ。それまでに基本隊形から盾の使い方、攻撃を受けた際の防御など機動隊のあらゆる基礎を体にたたきこむ。

訓練の最後には重さ約5キロのジュラルミン製の盾を持って、隊庭を走る。汗が吹き出し、足取りが重くなっても、隊員らは「イチ、ニ、イチ、ニ」の掛け声を出し続けた。

ラグビー部がある3機は、屈強な男性警察官が居並ぶ。その中でも人一倍声を出して奮闘していたのは、山口愛佳(まなか)巡査長(25)だ。

平成31年4月に拝命し、碑文谷署で交番勤務を経て今年3月に3機へ配属された。山口さんは両親が警視庁の警察官。似顔絵捜査官や警衛課などさまざまな業務に就く母親を見て、「子育てしながら働く母のように、私も同じ道に進みたいと思いました」という。

機動隊には自ら志願した。「自分の声で周囲を動かす姿にあこがれた」と、「DJポリス」で有名になった雑踏警備などを誘導する「広報係」を目指している。いずれは大型免許の取得など、「さまざまな知識をつけたい」と意気込む。

救助の道を究めたい

山口さんとともに3機に配属されたのは、藤嶋めぐみ巡査部長(32)だ。以前、第8機動隊に所属しており、機動隊は2回目。

動物が好きで、動物に関わる仕事がしたいと警視庁に入庁。合気道5段で大型免許の資格も持つ。5年間、警備2課で警備犬のハンドラーとして勤務するうちに「災害救助の訓練をする中で、さらに救助の知識を身に付けたい」との思いを強くし、再び機動隊を希望した。

訓練自体は好きだというが、巡査部長になると、分隊長を任せられるため、これまでとは違った視点で臨んだ。「小隊長がいないときは分隊長が代わりに動かないといけない。自分のことばかりではなく、常に周りを見て自分が動かないといけないのは難しかった」と話す。

男女関わらず力に

毎年春と秋に新隊員が入隊する。今春はそれぞれの機動隊に約300人が配属された。うち女性隊員は約10人。機動隊に女性隊員が配置されたのは平成6年で、当時に比べて数は2倍に増加したが、全体の約3%と狭き門だ。

「警察の現場で男女の体力差を感じざるを得ない部分はあるが、機動隊は1人ではなくチームで動く。一人一人が訓練で自立してチームとしての総合力が上がれば、男女関わらず力になることができる」

そう話すのは、3機の中村佳子副隊長(52)だ。中村さんは首相や要人などの警護を務める警護課のSP(セキュリティーポリス)や皇族の警護を務める警衛課などを歴任した警備のスペシャリスト。機動隊への配属は初めてだが、「これまでの経験を生かしながら、自信を持って警備に当たれるよう若手の指導に当たりたい」と話した。

入隊から1カ月が過ぎ、2人は皇居周辺など重要施設の警備に就く。「置かれた場所で花を咲かせられるように頑張りたい」と山口さん。藤嶋さんも「『ほこりの3機』(愛称)の名に恥じないよう、プライドを持って仕事に取り組みたい」と力を込めた。

(大渡美咲)

新年度を迎え、首都の治安を守る警視庁でも新しい部署へ配属が決まった警察官がいた。緊張や期待、不安を胸に奮闘する「新任」警察官の姿を追った。

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