戦火のウクライナ

空襲警報への慣れ 避難行動の難しさ

4月28日夜にミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンションの前で遊ぶ子供 =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)
4月28日夜にミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンションの前で遊ぶ子供 =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)

ロシアからの侵攻が続くウクライナ。日本から記者と同行で入った首都キーウ(キエフ)からの4回目のリポートは、毎日のように当局から出される空襲警報について取り上げてみたい。

(写真報道局 桐原正道)

「みんな慣れちゃいました」

キーウに到着した日、ホテルの自室で仕事をしていると窓の外からかすかにサイレンのような音が聞こえた。外を見たが特に変わった様子はない。歩道をたくさんの住民が歩いており、乗用車やタクシー、トラックも走っている。ホテルの館内アナウンスで避難の呼びかけなどもなく「訓練かな」と考えて気に留めていなかった。

4月28日夜にミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンション =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)
4月28日夜にミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンション =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)

翌日、地元の男性(28)と話していた際に話題にすると、実際に空襲警報が発令されていたという。「最初はサイレンが鳴ると怖かったけど、もうみんな慣れちゃいましたよ」。ロシア軍の侵攻開始から2カ月。空襲警報を気に留める人はあまりいないようだ。地下鉄の一部区間が運休する程度で、市民生活への影響は少ないという。

スマホのアプリで確認

キーウ市内は大量の車が行きかううえ、雑踏の音もあり、サイレンの音が聞こえづらい。ホテルの部屋でテレビをつけていると気が付かないぐらいだ。空襲警報が発令されていることをどうやって知ったのか男性に聞いてみると「テレグラム」というSNSを勧められた。

テレグラムはロシア発のSNSで、LINEなどに近いメッセージアプリ。早速、スマートフォンにダウンロードし、教えられた通り、キーウ市のアカウントをフォローしてみた。

テレグラムのアプリで表示される空襲警報の通知 =1日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)
テレグラムのアプリで表示される空襲警報の通知 =1日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)

すると翌日以降、毎日のように空襲警報の通知が届くようになった。ただ通知そのものは、スマートフォンの画面に通知音とともに「キーウに空襲警報が発令されました。シェルターに避難してください!」という文字が表示される仕組みだ。

重要なのは、通知を受けて実際に避難するかどうかだが、住民をはじめ市内の兵士や取材先で会う報道関係者さえも、警報そのものを気に留めていないため、結局、誰も行動に移す人はいないのが現状だ。

出す側と受け止める側のギャップ

キーウに空爆などの航空攻撃が行われていない今、発令される「空襲警報」はミサイル攻撃に対してのものが多いのだろう。ロシア本土かベラルーシからミサイルが発射されると、空襲警報が発令されるもようだ。

そのミサイルが全てキーウに向けて飛んでいるのか、別の地域に向けたミサイルも含めてキーウに空襲警報が発令されているのかは分からない。最悪の事態を想定して警鐘を鳴らす当局と、大抵は大丈夫だと考える市民たちの意識の間には大きなギャップがあるようだ。

4月28日夜にミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンション =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)
4月28日夜にミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンション =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)

4月28日の午後6時過ぎ、ホテルの自室で夕食をとっているとその日3回目の空襲警報がキーウに発令された。記者も大抵のキーウ市民と同様、スマートフォンの通知を一瞥(いちべつ)すると夕食を続けた。

午後8時過ぎ、出掛けようとホテルの玄関を出ると空から雷のような音が聞こえる。雲行きが怪しかったため「雨になるのかな」などと考えてタクシーに乗った。しばらくして、スマートフォンの画面にテレグラムの通知が表示された。「キーウがミサイル攻撃を受けました」。

4月28日夜にミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンション =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)
4月28日夜にミサイル攻撃を受けたキーウ中心街のマンション =4月30日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)

後の報道で、ミサイル攻撃を受けたマンションで報道関係の女性が1人亡くなったことを知る。彼女が避難行動をとっていたかどうかは分からないが、破壊されたマンションを見ると、地下シェルターに避難していれば無事だった可能性が高いと考えられる。

頻出する警報と市民の慣れ。戦争と災害を同列に扱うことはできないとしても、リスクに対応することの難しさは似ているような気がした。

テレグラムのキーウ市当局のアカウント。1日現在で48万人以上のフォロワーがいる =1日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)
テレグラムのキーウ市当局のアカウント。1日現在で48万人以上のフォロワーがいる =1日、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)

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