持病などの症状改善に向けて医学的助言を受けられる「治療用アプリ」の開発を後押しするため、大阪府の呼び掛けで今月中にも10億円規模の共同ファンドが設立されることが1日、関係者への取材で分かった。技術力とアイデアを持つベンチャー企業を大阪に誘致し、開発拠点の形成と雇用創出につなげる狙いだ。
治療用アプリでは、患者がスマートフォンなどを通じて日々の症状や生活状況のデータを入力、人工知能(AI)などがこれを分析して疾患指導につなげる。開発時に治験(臨床試験)を実施し、医学的な効果を実証する点に特徴がある。府はファンドを活用して開発されたアプリを、2025年大阪・関西万博に合わせた国際会議でPRすることも視野に入れる。
世界では、ライフ系ベンチャー企業が健康・医療分野での技術革新の担い手となっているが、わが国では失敗のおそれもあるリスクマネーの供給面や、インキュベーション(起業支援)の環境整備に課題があり、政府も最新の戦略の中で「育成のための土壌が整っていない」と危機感に言及している。
こうした現状を踏まえて設立される今回の共同ファンドでは、製薬やIT、金融の大手など10社程度で10億円を出資してもらうことを想定。専門家の審査を通ったベンチャー企業やスタートアップ(新興)企業の資金調達を支援し、生活習慣病の改善や病気の予防などの効果を実証したアプリの開発につなげる。
関係者によると、府は今後、アプリの開発段階における実証実験での支援や、開発後の普及に向け、健康関連事業で連携していくことを検討している。医学部がある大阪大や大阪公立大なども協力し、開発企業に治験のノウハウを提供してサポートする計画だ。