朝晴れエッセー

グーグル帰省・4月30日

コロナ禍や大水害に見舞われ、もう5年ほど熊本の郷里に帰省していない。そこで、あるテレビ番組をまねて、「衛星写真での帰省」を思い付き、パソコンの画面に郷里の町全体を映し出した。

真っ先に両親が眠るお寺に参拝。画面に両手を合わせて…。そうだ、せっかく帰省したのだから、思い出の場所を巡ろう。

まずは小学校だ。50年以上前の木造校舎もグラウンドの大木もなくなっている。通学路をマウスでたどり当時をしのんだ。

令和2年の水害時は、この町全体が水没し惨憺(さんたん)たる状態を報道で見たが、グーグルの写真では通常の町並みが写っている。

祭りが楽しみだった「諏訪神社」から山間に向けて進むと「やびつ橋」があり、左側に向かうとすぐに兄が勤めていた採石場がある。ここの事務所や機械、トラックなどは皆洪水で流されてしまったらしい。

さらに進み、やっと実家の集落にたどり着いた。たった十数軒の集落なのに、あの洪水で崖崩れが発生し、一軒の家と尊い命が失われている。画面に手を合わせた。

ついでにもう少し丘の方に行ってみよう。ここは見渡す限りの蜜柑(みかん)山だった。緑の木々の中にある無数のオレンジ色の点に加え、この丘から見渡す有明海と天草の展望はまさに絶景だ。

夕日の中の、静かな海の上に浮かぶ幾つもの帆船。時には不知火も見えるこの風景には、誰もが目を奪われ、しばし時を忘れてしまうだろう。

私はいつかここに一軒家を建て、蜜柑を食べながらこの風景を満喫したいと思っている。


中山末夫(63) 三重県名張市

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