関西の鉄道

「1番」がないのに日本一が2つ JR京都駅 「十津川警部」の舞台にも

京都駅0番ホーム。主に北陸方面へと向かう特急サンダーバードが発着する
京都駅0番ホーム。主に北陸方面へと向かう特急サンダーバードが発着する

古都の玄関口である京都駅。JR各線をはじめ、近鉄や京都市営地下鉄が乗り入れ、1日平均約60万人(新型コロナウイルス禍前)が行き交う関西有数のターミナル駅だ。西南戦争が起こった明治10(1877)年に開業し、今年は145周年。歴史あるJR京都駅は、他の駅には見られない「日本一」が2つもあることでも知られる。日本一長い0番ホームと最も数字の大きい34番ホーム、その謎に迫った。

1番がない

京都市内を南北に貫く烏丸通を市中心部から南下し、正面に見えてくるのが、近代的なたたずまいの京都駅だ。中央口から改札を抜けると、すぐ目の前は0番ホーム。主に北陸方面に向かう特急サンダーバードが利用するが、朝は琵琶湖線などの新快速も発着する。0番ホームに立つと、2~10番までのホームは望めるが、なぜか1番ホームだけが見当たらない。

JR西日本近畿統括本部広報の蒲原(かもはら)和也さんによると平成4年、駅ビル工事の一環でホームを拡張した際に、「運転番線」の改訂が行われたことが原因。運転番線は、運転士らが職務上使う番号で、ホームの有無にかかわらず線路ごとに付けられているという。

京都駅では、JR東海が管理する東海道新幹線の11~14番線の数字は動かせないという事情があり、JR西の在来線11本の運転番線を10以内で収める必要があった。そのため0~10の数字を割り当てた。

一方、ホームは1からの番号が振られており、この時点では1番ホームは存在していた。ただ、ホームは1番だが利用する運転番線は0番という状態で、混乱を招いたことから14年、ホームも0番に変更されたという。さらに0番ホーム(323メートル)は、その先に続く30番ホーム(235メートル)と一体化され、全長558メートルとなり、日本一の長さを誇る。

ホームは34番まで

東端から西端まで歩くと、831歩、5分43秒もかかった。鉄道愛好家で会社員の渡辺弘二さん(57)によると、昭和40年代には1番ホーム(現0番ホーム)の先に間借りするように「山陰1番ホーム」があった。1番からは青森に向かう特急白鳥が、山陰1番からは鳥取に向かう特急あさしおが走っていたという。渡辺さんは「北は青森から西は鳥取までつながり、鉄道ロマンがかきたてられたホームだった」と懐かしそうに振り返る。

その後、山陰1番ホームの名称は30番ホームに変更され、ほかの山陰線のホームも31~34番ホームとなった。ここで、もう一つの日本一が誕生した。30番台の数字になったのは山陰線の「さん」にかけたからだという。京都駅には0~34番のホームがある。ただ、欠番も多く実際にあるのは19ホームで、34番は降り場専用という珍しさもある。

渡辺さんは「子供の頃、夏休みに1番ホームから雷鳥で出掛けるのが楽しみでした。1番が0番となり、雷鳥はサンダーバードに変わったが、今でもこの長いホームから乗車する時は特別なワクワク感があります」と魅力を語った。

西村ミステリーのタイトルに

旅情をかきたてる駅はたびたび小説やエッセーなどにも登場する。駅や列車を舞台にしたトラベルミステリーといえば、3月に亡くなった作家、西村京太郎さん。京都駅の0番ホームは、作品タイトルにもなったほどだ。平成22年に当時の角川書店から出版された「京都駅0番ホームの危険な乗客たち」で、おなじみの「十津川警部」シリーズの一つとして人気がある。

近代的な外観が特徴の京都駅
近代的な外観が特徴の京都駅

暗号めいた新聞広告をもとに、要人に復讐(ふくしゅう)を企てる犯人グループが京都駅0番ホームから寝台特急に乗り込んで計画を遂行し、十津川警部が事件を解決していく。小説で0番ホームは、当時運行していた大阪と青森、札幌を結ぶ寝台列車「日本海」「トワイライトエクスプレス」が発着する場として描かれた。ほかに京都駅を題材にした西村作品は、京都駅爆破を脅迫する犯人と十津川警部の攻防を描いた「京都駅殺人事件」(光文社)がある。ただ、長年にわたり京都を拠点に執筆していた西村さんにしては、京都駅をテーマにした作品は意外に少ない。(田中幸美、写真も)




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