ネコにとって「不治の病」とされてきた腎臓病の治療薬開発を目指し、東大教授を辞めて一般社団法人「AIM医学研究所」を設立した宮崎徹さん(59)。全国の愛猫家にとって、気になるのは薬の開発の進捗状況だろう。「今年終わりから来年初めには治験に入る」見通しだという薬が実用化されるのは、いつごろなのだろうか。
ネコは5歳ぐらいから腎臓に異常が出始めるケースが多い。ペット保険などを手がけるアニコムホールディングス(東京都)の「家庭どうぶつ白書」(平成29年版)によると、12歳以上のネコの死亡原因の32・7%は、腎臓病などの泌尿器系疾患。有効な治療法はなく、5~7割は改善せずに慢性腎不全のため15歳程度で死ぬという。ネコの腎臓病は、獣医や愛猫家たちにとってまさに「宿敵」だ。
腎臓は、血液中の老廃物を尿として排出する役割を担う。腎不全はこの機能が働かない状態のことで、尿の通り道が老廃物でふさがれてしまうことなどが原因とされる。
ヒトやマウスが急性腎不全になった場合は、宮崎さんが発見したタンパク質「AIM」が発動して老廃物が排除され、腎機能が改善することが分かっている。だが、ネコはAIMを持ってはいるものの、なぜか働かない。そこで、ネコにも機能するAIMを薬として投与する-というのが、開発中のネコ薬の「仕組み」だ。