主張

小学生大会の廃止 まず大人が意識の変革を

子供たちのスポーツに勝利至上主義が蔓延(まんえん)することは好ましくない。その要因を取り除き、子供たちが心からスポーツに打ち込める環境を作ることが大事だ。

気になるのは、スポーツ界が小学生の全国大会廃止に向けた動きを加速させていることだ。

全日本柔道連盟(全柔連)は5、6年生が対象の全国小学生学年別大会の廃止を決め、日本スポーツ協会も、スポーツ少年団の全国大会について、将来的な中止を視野に入れた議論を進めるという。

全柔連は「小学生が勝利至上主義に陥ることは、好ましくない」としているが、その説明はおかしい。勝利至上主義に毒されているのは大人の方である。

大会で勝たせるために無理な減量や危険な技を子供に強いる指導者もいれば、審判やわが子の対戦相手に罵声を浴びせるなど、常軌を逸した保護者もいる。

本来は大人の意識改革を急ぐべきで、全国大会の廃止では問題の解決にならない。むしろ、多様な環境の中で育ったライバルたちと交流する、貴重な人生経験まで奪うことになりかねない。

心身が成長段階にある小学生にとって、スポーツが果たす役割は小さくない。昨日より速く走る、遠くへ跳ぶという向上心は生きる意欲につながる。仲間や好敵手との切磋琢磨(せっさたくま)を通じ、尊敬や思いやりなどの社会性も養われる。

スポーツの効用を歪(ゆが)めているのは、目的をはき違え「勝たせる」ことに執着する指導者、保護者の存在だ。「人間形成」をうたう柔道界が、そのような大人の再教育を掲げるならともかく、子供たちの競技環境を奪うのは本末転倒だろう。短絡的な発想はスポーツ界全体の評価を下げるだけだ。

勝つための試行錯誤が否定されてもいけない。勝利至上主義を戒めるなら、大会のあり方に知恵を絞るべきだ。トーナメント方式に加え、リーグ戦や交流を目的とした大会など、多様な選択肢があっていい。バレーボール元日本女子代表の益子直美さんが主催する「監督が怒ってはいけない大会」といった好例もある。

「勝つ」「楽しむ」など、子供がスポーツとどう関わるのかを自分で考えさせ、選ばせる。それを手助けするのが、本当の意味で優れた指導者だろう。大人が子供から主役を奪ってはならない。

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