『不倫と正義』中野信子、三浦瑠麗著(新潮社・924円)
コロナ禍で不倫が増えているのだそうです。
「ジェクス ジャパン・セックスサーベイ」という調査によると、平成29年に浮気・不倫経験があると答えた男性は4割弱、女性は2割強だったのが、令和2年の調査では男性が7割近く、女性が4割強にも及んでいるのです。
この数字は性風俗店利用も含みますから、ストレートに「不倫が激増」とは言えませんが、ご自身の周囲を見渡すとどうでしょう? あるいはご自分の胸に手を当ててみると…?
一般に不倫が「蔓延(まんえん)」している印象がある一方、芸能人やアスリート、政治家など、有名人が不倫したとなると激しくバッシングされます。このギャップはいったいなんなのでしょう? なぜ有名人の不倫ばかりが激しく非難されるのでしょうか。
その疑問を糸口に、脳科学者の中野信子さんと国際政治学者の三浦瑠麗さんが、それぞれの「知」の領域から縦横に語り合ったのが本書です。
なぜ人は不倫をするのか。不倫をしがちな脳のタイプとは。愛のある不倫も許されないのか。バッシングの構造にひそむ日本人の心性とは…。
いま最も切れ味鋭い知性の持ち主たちの議論はやがて、メディアや国家、日本の結婚制度は誰のためにあるのかといった点や人間の本能にまで及んでいきます。不倫の「倫」とは、日本人にとって倫理や正義とはなんなのか。
スリリングな2人の対話がたどり着く先を、ぜひご自身でお確かめください。
(新潮社新潮新書編集部 北本壮)