グテレス氏、ゼレンスキー氏に人道支援拡大を表明 露、直後にキーウ攻撃

記者会見で握手を交わす国連のグテレス事務総長(左)とウクライナのゼレンスキー大統領=28日、キーウ(ロイター=共同)
記者会見で握手を交わす国連のグテレス事務総長(左)とウクライナのゼレンスキー大統領=28日、キーウ(ロイター=共同)

国連のグテレス事務総長は28日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領と会談した。会談後の共同記者会見でグテレス氏は同国に侵攻したロシアを非難し、国連による人道支援の拡大を表明。ウクライナ側が籠城する東部マリウポリの製鉄所からの市民退避の実現に尽力する意思を示した。一方、ロシアは両氏の会談直後にキーウをミサイル攻撃。各地への攻撃も続けた。

グテレス氏滞在中のキーウへの攻撃について、ゼレンスキー氏は「国連への侮辱だ」と非難。グテレス氏も英BBC放送に「ショックを受けた」と述べた。露国防省は29日、「軍需施設への攻撃だ」と主張した。ウクライナ側はこの攻撃で民家が被害を受け、少なくとも市民1人が死亡、10人が負傷したとしている。

これに先立つ共同記者会見で、グテレス氏は「侵攻は国連憲章違反だ」とロシアを非難。侵攻で1200万人以上の市民が自宅を追われたとし、230万人に提供してきた食糧援助を6月までに600万人に拡大し、金銭援助も8月までに200万人に提供すると表明した。マリウポリの製鉄所は「危機の中の危機だ」とし、市民退避を早急に実現する意向を示した。

ゼレンスキー氏も製鉄所からの退避についてロシアと交渉する用意があると述べ、国連の関与を歓迎。また、「多数の市民が露国内に強制移住させられている」とし、市民の帰還のために国連の支援を求めた。

ただ、タス通信によると、ペスコフ露大統領報道官は28日、ロシアは製鉄所からの市民の退避を認めている-と主張。「何を交渉するのか」と反論した。

製鉄所を巡っては、ウクライナ側はロシアが攻撃を続け、避難ルートを両国合意なしで一方的に設定していると非難。強制移住に関しても、ロシアは「人道措置だ」と主張している。

露国防省は29日までに、東部ハリコフ州などの燃料貯蔵施設などを空爆で破壊したと発表。キーウ州や南部オデッサ州など3カ所の鉄道設備もミサイルで破壊したとした。物資供給網を断つ狙いとみられる。

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