【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の工作員から多額の暗号資産(仮想通貨)を受け取って韓国軍の軍事機密を流出させたとして、韓国陸軍の現役大尉が、警察や軍、検察に国家保安法違反容疑で逮捕・起訴されていたことが29日までに分かった。東亜日報など韓国メディアが伝えた。
大尉は工作員と直接接触したことはなく、通信アプリ「テレグラム」のやり取りで取り込まれ、指示されていた。オンライン上で北朝鮮に取り込まれてスパイ活動した現役将校の摘発は初めてだという。
北朝鮮がサイバー攻撃で各国から大量の暗号資産を盗み出している実態は判明しているが、暗号資産をスパイ活動にも活用している現状が浮き彫りになった。
大尉は今年1月、北朝鮮工作員の指示で、韓国軍が演習などの際に情報をやり取りする「合同指揮統制システム」のログイン画面などを撮影し、工作員に送信した疑いが持たれている。工作員とオンラインコミュニティーで知り合った友人から紹介され、工作員とはテレグラムだけでやり取りしていたという。
ネット賭博などで借金があり、工作員から4800万ウォン(約500万円)相当の暗号資産を受け取っていた。軍事機密の撮影に使う時計型隠しカメラを大尉に送るなどした暗号資産投資会社の代表も逮捕・起訴された。この代表も多額の暗号資産を受け取り工作員に取り込まれ、別の将校に軍事機密の持ち出しを持ちかけたが、失敗したという。