話の肖像画

谷垣禎一(27)「パラ」の意義とは選手自身の喜び

小池百合子知事(右)からパラリンピック成功などに向けた都懇談会の名誉顧問委嘱状を手渡される =令和元年5月、都庁
小池百合子知事(右)からパラリンピック成功などに向けた都懇談会の名誉顧問委嘱状を手渡される =令和元年5月、都庁

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《令和元(2019)年5月、東京都の有識者懇談会「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会(パラバリ懇)」の名誉顧問に就任した。小池百合子知事からの直々の就任要請を受け入れたが、平成28年7月の知事選の経緯から、すぐに受諾する気にはなれなかった》


小池さんもマメな人でね。私の入院中は病院の下を通りかかると「今、下を通っています」とメールをくれることがあったんですよ。名誉顧問を頼まれたのは(29年末に)退院後、私の家にお見舞いに来られたとき。移転問題でいろいろあった市場の果物を手土産にね(笑)。

ただ、小池さんに言われたからといって、すぐ引き受ける義理はなかったんです。私がけがをしたのは、小池さんの出馬で自民党が分裂した知事選のときでしたからね。

でも、「障害者の気持ちが分かる人にやってほしい」と言われると、それでも「ノー」とはなかなか言えませんでした。知事選の経緯がどうであろうと、パラリンピックの応援団は引き受けざるを得ない。多少はお手伝いしないといけないなと思ったんです。


《令和3年8月、東京パラリンピックが開幕した。谷垣さんが注目したのは、自転車競技で日本勢史上最年長の金メダリストとなった杉浦佳子選手(51)。女子個人ロードタイムトライアルと同ロードレースで優勝し、2冠に輝いた。杉浦さんは平成28年4月、趣味で参加したロードレースで大けがを負い、高次脳機能障害などが残る。同年7月に趣味のサイクリングで頸髄(けいずい)を損傷した谷垣さんとは、けがの時期が近く、要因も似ている》


杉浦さんとは対談したことがあるんです。障害を負ったけど、昔の仲間に「もう一回やろうよ」と誘われて、「やってみよう」と思ったと言っていました。それで、けがから1年ぐらいで世界選手権で優勝しちゃったんですね。彼女はもともと相当高い運動能力を持っていたのだと思うし、自転車ももともと好きだったんでしょう。もちろん努力もものすごくされたと思います。

だけど、その「努力」って、ただ苦しくて面白くないことをやるばかりではなかったんじゃないでしょうか。本人にやる気がなかったら、あんなふうにはなれないと思うのです。他人からいくら「やれ」と言われても、「こんなくそ面白くもないものできるか」と思ったら、できないですよね。リハビリだって、嫌々やっても効果は上がらないんじゃないでしょうか。本人に「これをやると面白いな」っていう気持ちがなかったら続かない。要するに「自発性」が肝心だと思うんです。

パラリンピックに感動するかしないかといえば、感動しますよ。選手たちには「よっぽど頑張ったんだろうな」と人々を感動させる力がある。だけど、パラリンピックの意義は他人を感動させることじゃなくて、まず選手自身が喜びを見いだすことにあるんじゃないでしょうか。選手の姿に刺激を受けた側も、自分がどこまでできるかは別として、まずは楽しむ。野球が好きな小中学生だって、誰もが(米大リーグ・エンゼルスの)大谷翔平選手になれるわけじゃないけど、彼に憧れて自発的に練習をするわけですよね。

「自助・共助・公助」と言った菅義偉(すが・よしひで)前首相が、「政治家はまず公助から言うべきだ」と批判されましたけど、公助ばかり言ってもねえ。そりゃ仲間の助けは必要だし、お国もそれなりの制度を用意すべきだけど、自発性を持つ人が自らを奮い立たせられる仕組みを政治が考えることもなくちゃね。初めから「国がお助けしますよ」というだけじゃ、私はうまくいかないと思うんですよ。(聞き手 豊田真由美)

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