ウクライナ戦争が示したポスト冷戦体制終焉 「封じ込め」復活論も

イエレン米財務長官(ロイター)
イエレン米財務長官(ロイター)

ロシアの侵攻開始から2カ月余りが経過したウクライナ戦争は、中露などの強権主義勢力をもグローバル経済に組み込み、「ウィン・ウィン」の関係を築こうとしてきたポスト冷戦体制の行き詰まりをあらわにした。今や価値観を共有する国々の経済ブロックを構築すべきだとの議論が高まり、冷戦期にソ連(当時)の拡張を阻止するために採用された「封じ込め」政策の復活を説く声も上がっている。(ワシントン 大内清)

イエレン米財務長官が13日に行った講演は、外交専門家らに衝撃を与えた。グローバル経済をリードする立場にある米国の経済閣僚が、「自由だが安全な貿易体制」を実現するため、サプライチェーン(供給網)を「信頼できる国々」で再構築することを提案したからだ。イエレン氏はこれを、物資の供給先や調達元を中露などの敵対国から友好国に移す意味で「フレンドショアリング」と呼ぶ。企業が業務を海外に移す「オフショアリング」になぞらえた表現だ。

米欧は冷戦後、中露などをともに繁栄を目指す「パートナー」とみなしてきた。欧州連合(EU)は原油や天然ガス輸入の多くをロシアに依存し、米国も輸入量の数%程度ながらも露産原油を購入。ロシアは歳入の大部分をエネルギー輸出に頼った。中国は「世界の工場」として世界的なサプライチェーンに不可欠な存在となった。イエレン氏の構想は、こうした相互依存関係からの決別宣言と受け止められたのだ。

デカップリング(切り離し)を論じる声はこれだけではない。オバマ政権下の2009~13年に米国の北大西洋条約機構(NATO)大使を務めたイボ・ダルダー氏は、ウクライナ侵攻後の3月1日に米外交専門誌フォーリン・アフェアーズ(電子版)で、「封じ込め(コンテインメント)政策の復活」を説いた。

「封じ込め」は、米外交官ジョージ・ケナンが1947年、匿名の「X(エックス)」として同誌で提唱した概念だ。ソ連指導部の行動原理などを分析し、その拡張主義に対抗するには「長期的で我慢強く、強固かつ用心深い封じ込め」が必要だと主張。NATOの創設などにつながった。

ダルダー氏はその現代版として①米国の軍事力維持②ロシアと西側諸国の経済的デカップリング③ロシアの政治的孤立-を追求することで、究極的にプーチン露体制の崩壊を促すことを目指すべきだと論じる。

2014~17年に国務省で対露制裁を担当したエドワード・フィッシュマン氏と、米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)」のクリス・ミラー氏も同誌(2月28日付電子版)への共著論文で、西側諸国とロシアが共存共栄できるとの考えは捨てるべきだとした。

こうした議論が熱を帯びるのは、ウクライナ侵攻が大国による武力侵略の恐れを現実のものとして浮き彫りにしたからに他ならない。周辺国・地域に対して覇権主義的な行動を加速させる中国への脅威認識が強まるのも自然な流れだ。

「米国の政治家は今後、ますます中国に強硬姿勢を示さなくては選挙で勝てなくなるだろう」。米国のアジア政策に詳しいシンクタンク「シカゴ地球問題評議会」のクレイグ・カフラ氏は取材にこう語り、インド太平洋における日米豪印4カ国の「クアッド」や米英豪の「AUKUS(オーカス)」など価値観を共有する国々との安保・経済枠組みがさらに重みを増すと予測。ウクライナ侵攻で国際社会は「(ポスト冷戦体制に)後戻りできない一線を越えた」と指摘した。

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