首相、5カ国歴訪へ 東南アジア外交出遅れ否めず

政府は28日、岸田文雄首相が29日から5月6日までの日程でインドネシア、ベトナム、タイ、イタリア、英国の計5カ国を歴訪すると発表した。ロシアがウクライナに侵攻する中で、先進7カ国(G7)と対露強硬姿勢で足並みをそろえるとともに、東南アジア諸国には対露圧力への理解を求める。東・南シナ海で一方的な現状変更の試みを続ける中国を念頭に連携も呼びかける。

松野博一官房長官は今月28日の記者会見で「今回の訪問を通じ、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、各国とのさらなる協力関係に取り組む。ウクライナ情勢、東・南シナ海、北朝鮮、ミャンマーなどの地域・国際社会の諸課題に対する連携を確認する」と説明した。

歴代首相は国会審議が行われない4月末から5月上旬の大型連休に合わせ、複数の国を歴訪するのが通例となっている。政府は当初、ウクライナ危機による供給不安が原油相場を押し上げていることを踏まえ、中東の産油国を訪問して増産を働きかけることも検討した。しかし、大型連休はラマダン(断食月)とラマダン明けの祭りの期間と重なるため中東諸国訪問は見送った。

東南アジアは日米両国と中国が影響力を競い合う外交上の要所で、第2次安倍晋三内閣、菅義偉内閣は発足から1カ月前後で首相が東南アジア諸国を歴訪している。「自由で開かれたインド太平洋」に向けた取り組みを継承する岸田政権にとっても東南アジアの重要性は変わらないが、政権発足から半年以上が過ぎても東南アジア諸国への訪問は3月のカンボジアのみだ。

岸田首相は最初の訪問先として米国にこだわったが、米政府との交渉が難航。今年1月のバイデン米大統領との電話会談で、日米豪印4カ国(クアッド)首脳会合に出席するためバイデン氏が来日することで合意し、ようやく米国以外への訪問に乗り出した。年明け以降、感染力が強いオミクロン株が蔓延(まんえん)した事情はあったにせよ、東南アジア外交が出遅れた感は否めない。

一方、英国は昨年11月に国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に出席するため訪れたのに続き2回目の訪問。G7メンバーの英国、イタリア両国との首脳会談で連携強化に向けた地ならしを目指す。政府関係者によると、イタリア滞在中はローマ教皇と会談する可能性もあるという。(杉本康士)

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