決戦は5・14 女子サッカーINAC神戸が「国立2万人大作戦」展開

AC長野パルセイロ・レディース戦で攻め込むINAC神戸の田中美南選手⑨=4月16日、ノエビアスタジアム神戸(北川信行撮影)
AC長野パルセイロ・レディース戦で攻め込むINAC神戸の田中美南選手⑨=4月16日、ノエビアスタジアム神戸(北川信行撮影)

サッカー女子プロ「Yogibo WEリーグ」のINAC神戸レオネッサが、壮大な計画を立てている。5月14日に国立競技場(東京都新宿区)で行う三菱重工浦和レッズレディース戦で観客2万人を動員する-というもの。リーグの1試合あたりの平均観客数は1467人で、目標は10倍以上の数字。無謀にもみえるが、安本卓史社長は「大きな試合をすることで多くの人に見てもらいたい」と、思いは熱い。日本女子サッカーの底力を見せることができるか、注目される。

一気にジャンプアップ

神戸市を拠点とするINAC神戸が東京でホーム試合を開催すること自体、異例だ。背景には安本社長の「逆転の発想」がある。

「これで3度目やぞ」。今年1月、安本社長は憤ったという。理由はJリーグのヴィッセル神戸などと共用している本拠地ノエビアスタジアム神戸(同市兵庫区)の芝。張り替えや養生による会場変更が今季だけで3度目になったためだ。

1度目は昨年9月26日のジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦。堺市立サッカー・ナショナルトレーニングセンター「J-GREEN堺」(堺市)で開いた。3月5日のちふれASエルフェン埼玉戦は、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場(神戸市須磨区)に移した。そして、5月14日の三菱重工浦和戦。特に今回はホーム最終戦で、対戦相手が皇后杯全日本選手権を制したライバルチームということもあり、集客が見込める試合だった。

しかし、芝の状態を考えるとやむを得ない。安本社長はこれまでと同じように周辺で会場を探したが、ユニバー記念競技場は別のイベントで埋まっていた。Jリーグのセレッソ大阪やガンバ大阪にも声をかけたが、パナソニックスタジアム吹田(大阪府吹田市)やヨドコウ桜スタジアム(大阪市東住吉区)での開催も不可。窮余の策として浮上したのが、東京五輪・パラリンピックのメイン会場となった国立競技場でのホーム試合開催だった。

つてを頼って担当者に会い、協力してもらえることに。INAC神戸のスタッフからも「やりましょう」と前向きな意見が出た。安本社長は「どうせなら一気にジャンプアップして一番大きいことをしようと思った」と意欲を示す。

特別な雰囲気

INAC神戸が国立競技場での試合開催を発表したのは3月4日。安本社長は「観客2万人」を目指すことを表明したが、そこからが大変だった。スポンサー企業を中心に「国立開催スペシャルパートナー」を募り、約20社から協賛金を得て運営費を捻出した。特別な告知ポスターも制作。飲食店やJリーグの試合会場に掲出していく予定だ。

さらに、安本社長と国立競技場内のロッカー室や記者会見場などをめぐる〝聖地巡礼ツアー〟や、神戸のファンが観戦に訪れやすいよう往復航空券と1泊分のホテル宿泊券がセットになった応援ツアーも催行する。

国立競技場で打ち合わせを行うINAC神戸の安本卓史社長(左)とギタリストの春畑道哉さん=3月、INAC神戸提供
国立競技場で打ち合わせを行うINAC神戸の安本卓史社長(左)とギタリストの春畑道哉さん=3月、INAC神戸提供

また、ロックバンド「TUBE」のメンバーでギタリストの春畑道哉さんが、自身が作曲したWEリーグのアンセム(応援歌)「WE PROMISE」を生演奏。従来のホーム試合と同様に、小中学生や高校生、大学生の無料招待も実施。新型コロナウイルス対応への感謝を込め、医療従事者も無料で招く。

一方で、国立競技場に来られない地元神戸のファンのために、関西ローカルで地上波テレビでの生中継も行う予定。「収支の面でも黒字が見えてきた」と自信をのぞかせる安本社長は「聖地で試合をするインパクトも大事。選手たちにも、高校野球の甲子園球場のように、特別な雰囲気を感じる中でプレーしてほしい」と強調する。

こうしたINAC神戸の取り組みに対し、日本サッカー協会やWEリーグなども協力。平成26年からINAC神戸でプレーする伊藤美紀選手は「国立競技場のピッチは、なでしこジャパンに選ばれないと立てない場所だと思っていた」といい「サッカーをしている子供たちにたくさん来てほしい。感謝の気持ちを持ってプレーし、国立競技場で成長した姿を見せたい」と意気込みを話している。

女子サッカー 世界で人気

世界では女子サッカー人気が高まっている。今季の欧州女子チャンピオンズリーグ(CL)は、立て続けに観客数の記録を更新。中でも、連覇を狙うバルセロナ(スペイン)の盛り上がりぶりは驚異的だ。

3月30日に行われた準々決勝のレアル・マドリード(スペイン)戦で9万1553人をマークすると、今月22日の準決勝ウォルフスブルク(ドイツ)戦では9万1648人が本拠地のカンプノウを訪れた。従来のCLの記録は2012(平成24)年の決勝で記録した5万212人だった。

INAC神戸は29日にノエビアスタジアム神戸で行われるサンフレッチェ広島レジーナ戦で、優勝が決まる可能性がある。初代優勝チームの称号を持って国立競技場に乗り込めるか。実現すれば、皇后杯を制した三菱重工浦和との一戦は「真のチャンピオンシップ」(安本社長)となる。(北川信行)

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