【ニューヨーク=平田雄介、キーウ=遠藤良介】国連のグテレス事務総長は28日、ロシアに侵攻されたウクライナを訪問した。ゼレンスキー同国大統領と会談し、東部マリウポリの民間人を退避させる人道回廊の実現に向けて調整する見通し。ゼレンスキー氏はロシアの侵攻に対して十分に機能しない国連の改革の必要性を訴えるとみられる。
グテレス事務総長は28日の会談前、民間人の虐殺遺体が多数見つかった首都キーウ(キエフ)郊外のブチャなど3カ所を視察。「戦争で最も高い代償を払うのは罪のない市民だ」と述べ、国際刑事裁判所(ICC)による戦争犯罪などの捜査への全面支持を表明し、ロシアに協力を求めた。
グテレス氏は26日、モスクワでプーチン露大統領と会談し、ウクライナ側部隊が籠城するマリウポリの製鉄所からの市民約1千人の退避について、国連や赤十字国際委員会(ICRC)による関与を提案した。国連側は「原則合意」したと発表したが、タス通信によると、露側は「具体的な合意はない」(ペスコフ大統領報道官)ともした。
ゼレンスキー氏もマリウポリでの人道回廊設置に国連が役割を果たすことを求めていた。同時に、ロシアが拒否権を持つ国連安全保障理事会には「解体か、ロシア排除かを選ぶべきだ」と主張。グテレス氏が先にロシアを訪問したことについても「モスクワに遺体はない。現場を見るべきだ」と批判していた。
ウクライナでは28日も露軍の攻撃が続き、露国防省は同日、東部イジュム近郊などの弾薬庫を空爆で破壊したと発表した。ウクライナメディアによると、南部ザポロジエ州当局は同日、露軍のミサイルが民家に命中し、子供1人を含む3人が負傷したと発表した。