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(223)急な腹痛と下血

糖尿病で通院している70代前半の女性が予定外に来院しました。少し便秘をしていて昨夜トイレでいきんだところ、しばらくして急におなかが痛くなってきたそうです。痛みは強く、下痢をしたのですが、そのうちに真っ赤な下痢が出てくるようになったそうです。症状や診察所見から検査が必要と考え、すぐに消化器内科のある病院へ紹介したところ、そのまま入院となりました。病院ではCT検査などを行い、虚血性腸炎と診断されました。入院後は絶食と安静を指示されましたが、数日で症状は治まり、1週間ほどで退院できたそうです。

虚血性腸炎は大腸の一部の血流が悪くなり、粘膜が障害されて起こる腸炎です。急な腹痛、下痢、下血といった症状が見られ、特におなかの左側に痛みが出て、鮮血が出ることが多く見られます。多くは一過性で、絶食・安静だけで軽快します。再発率も1割前後と高くはありません。ただおなかの右側に痛みが出るときには要注意で、悪化することがしばしばあります。

この場合手術が必要になったり致命的になったりすることもあります。患者の大半が高齢者なので、寿命の延伸・高齢人口の増加などから罹患(りかん)者数は増えていると考えられます。虚血性腸炎は、糖尿病や動脈硬化性の病気を持つ人、また便秘の人などに起こりやすいとされます。

似たような症状を起こす病気として大腸憩室炎、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎といったものがあります。大腸がんも下血することがありますが、いずれも検査で鑑別できます。下血などの症状がある場合には内視鏡検査を行うことが勧められます。

大腸内視鏡検査を定期的に受けているという人はそうはいないと思いますが、健康診断で便の検査を受けている人は多いと思います。これは便の潜血反応を見る検査で、主に大腸がんを見つけるために行います。便潜血が陽性であれば、精密検査として大腸内視鏡検査を行います。しかしせっかく健康診断を受けて検査結果が陽性と出ても、大腸内視鏡検査を受けない人が1~2割いるそうです。

この患者さんも症状が治まった後で、改めて大腸内視鏡検査を受けました。結果は大腸がんなどの病気は見つからず、炎症を起こしていた部位も治癒していました。これからは定期的に検査を受けることを心に決めたそうです。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

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