ファンコミュニティでもっと寄り添うラジオ 新たな番組価値提供へ 株式会社エフエム東京

企業とファン、ファン同士が交流するオンライン空間「ファンコミュニティ」。従来はがきやメール、電話などによるリスナーとのコミュニケーションを重視してきたメディア、ラジオでもファンコミュニティを活用する動きが出てきた。エフエム東京(東京都千代田区)がファンコミュニティ構築・運営大手のクオンと協力して昨夏から運営している「LisCom(リスコム)」(会員数約1万5000人)だ。リスナー同士が24時間交流できるLisComは、これまでのツールではアプローチできなかったリスナーとの新しい接点ともなっており、ファンコミュニティならではのコミュニケーションを生かした番組作りも始まっている。

24時間寄り添うラジオ

「おかえり!」

「おかえり~!」

TOKYO FMで月~木曜の午後8時から生放送されているラジオ番組「Roomie Roomie!(ルーミールーミー、通称:ルミルミ)」は、曜日替わりパーソナリティーの野呂佳代さんと眉村ちあきさんの、こんな優しい呼びかけで始まる。TOKYO FMが今春の番組改編の目玉としてスタートさせたワイド番組で、LisComと連動して20~30代女性リスナーの思いや悩みに、音楽やトークで寄り添う。ルーミーは「ルームメート」を意味する言葉で、LisComと番組での交流を通じてリスナーとシェアハウスの仲間同士のような関係作りをめざしている。

新番組ルーミールーミーのロゴ
新番組ルーミールーミーのロゴ

ルミルミの最大の特徴は、メールやツイッターではなく、LisCom内の番組ルームをリスナーとの交流拠点としていることだ。番組では、友人や知人の面白いエピソードを紹介する大喜利のようなコーナーもあれば、恋愛の経験談や仕事の悩みなどを聞くコーナーもあり、番組ルームで集まった投稿を読み上げながら進行する。番組ルームは24時間いつでも投稿可能で、放送終了したトークテーマに投稿することや、リスナー自身が自由に話題を投げかけることもできる。野呂さんや眉村さんもユーザーとして参加している。番組開始から間もないが、番組ルームの参加者はすでに2000人に迫る勢いで、投稿頻度も高い。放送でコメントを取り上げられたリスナーがお礼のメッセージを投稿したり、数日後に経過報告したり。スポンサー企業に関連する投稿テーマにも500件近い投稿が集まっている。

番組の「お題」に参加した、眉村ちあきさんの投稿。放送で野呂さんが読み上げるとさっそくリアクションするユーザーもいた
番組の「お題」に参加した、眉村ちあきさんの投稿。放送で野呂さんが読み上げるとさっそくリアクションするユーザーもいた

LisComにはほかにも、同じくワイド番組の「ONE MORNING」や「Blue Ocean」など現在5つの番組ルームや、TOKYO FM全体をテーマにしたセンタールームもある(順次追加予定)。幅広い世代が参加し、匿名ながら同じ番組のファン同士という安心感からか、自身の経験や家族との思い出などについて素直に語る長文投稿も多い。車の運転や家事をしながらラジオを楽しむファンもいれば、好きな番組のコーナーやパーソナリティーについて語る熱心なファンもおり、番組スタッフやリスナー同士のやり取りを通じて、リスナー一人一人がラジオを「聴く」だけでなく「関わる」楽しみを見出している様子がうかがえた。

番組とリスナー、リスナー同士がつながる「LisCom」

同社執行役員で、コンテンツビジネス本部デジタル戦略局長の嶋裕司さんは「LisComでは、リスナーと番組がよりつながりを深められるだけではなく、リスナー同士もつながれる。交流を活性化することでもっとTOKYO FMのファン、ロイヤルカスタマーを育てていきたい」と、狙いを語る。運営を担当する同局ビジネス開発部の小田紀和さんも「リスナーの声をもっと集めて分析して、放送内容やリスナーとのコミュニケーションに還元していく好循環を作りたい」と意気込む。

2人はLisComを「ラジオの時間軸にとらわれない、まったく新しいコミュニケーション手法」と、強調する。リスナーとのコミュニケーション手法は、かつてのはがきや手紙からメールやSNSといったデジタルツールへ変わり、放送中のやり取りが生まれるなどリアルタイム性が増した。一方で、運転中や家事をしながらラジオを楽しむような、リアルタイムで反応しにくいリスナーとの接点には課題が残っていたという。小田さんは「(ファンコミュニティでは)放送時間に限らず、終了後も同じ番組を好きな人や番組スタッフとやり取りができる。SNSではせっかくのコメントが流れて埋もれて行ってしまうが、コミュニティではずっと蓄積されていく。番組からテーマを投げかけると、何カ月経っても新たにコメントしてくれる方がいて、写真付きの投稿や、よく考えて書かれた長文の投稿など、熱量を感じるものも多い。より深いコミュニケーションができている」と実感を込める。

こうしたリスナーの〝熱量〟に応えようと、パーソナリティー以外の「裏方」による発信にも力を入れている。編成部の社員が答える質問コーナーやスタジオの舞台裏を動画で紹介するコーナーなどもあり、ユーザーからは「東京FMを身近に感じる」などと好評だ。嶋さんは「今まで我々がやれていないコミュニケーションができてきた。外出自粛で他人とふれあう場がなかなかないという方にとって、安心して本音で語り合えるような場に育てていきたい」と話す。

コミュニティ「LisCom」を運営するエフエム東京執行役員の嶋裕司さん(左)と小田紀和さん
コミュニティ「LisCom」を運営するエフエム東京執行役員の嶋裕司さん(左)と小田紀和さん

番組のファンとスポンサーの架け橋に

同社では令和2年から「ラジオ局からオーディオコンテンツ事業者への進化」を掲げ、オフラインコンテンツであるラジオのオンライン化に力を入れてきた。TOKYO FMの番組や配信特別番組をインターネットやスマホで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」を筆頭に、さまざまなサービスを展開している。LisComで生まれる「深いコミュニケーション」も番組の質向上だけでなく、広告やマーケティングへ活用していく狙いがある。

今月スタートしたルミルミでも早速、アルコール飲料メーカーの商品モニター募集キャンペーンなど、スポンサー企業とリスナーとの交流が始まっている。番組ルームではキャンペーンに合わせて「家飲み会」を立ち上げてお酒にまつわるさまざまなエピソードを投稿しやすいようサポート。さっそく「宅飲みしてますか?」と他のユーザーに呼びかけるユーザーが現れ、番組が立ち上げた「自宅で過ごす贅沢(ぜいたく)な時間」を共有し合う投稿テーマにも、200件以上投稿が寄せられるなど盛り上がっている。

「毎日の投稿から我々も、番組をどんなリスナーがどういう気持ちで聞いてファンになっているのか。ファン化のポイントを学んでいる。そういったノウハウをスポンサー企業にも提供してリスナーと関わってもらうことで、番組のファンがスポンサー企業のファンになるという流れを加速させていきたい」と、嶋さん。LisComがリスナーとスポンサー企業との、出会いの場、架け橋になるわけだ。「LisComが盛り上がり、広告商品としての魅力が上がれば、デジタルの収益向上にもつながる。スポンサーと一緒に、よりファンが求める心地よい放送を届けたい」と話している。

⇒クオンに関する詳しい情報はこちら

提供:クオン株式会社

会員限定記事会員サービス詳細