和歌山・海南市贈収賄事件 被告2人は元上司・部下

海南市役所へ捜索に入る和歌山県警の捜査員ら=2月3日
海南市役所へ捜索に入る和歌山県警の捜査員ら=2月3日

今年2月に発覚した和歌山県海南市発注の公共工事をめぐる贈収賄事件は、市都市整備課建築係長の木下知海被告(46)=有田市=が収賄罪などで、建築設計事務所社長の木田吉宣被告(48)=和歌山市=が贈賄罪で、起訴されるなどした。もともと2人は民間の建築設計事務所の元上司・部下の関係だが、市は木下被告を採用した後も2人の癒着を見抜けなかった。県警は平成24年ごろ以降、計約1千数百万円の受け渡しがあったとみている。

送検される木下知海被告=2月4日、和歌山県警海南署
送検される木下知海被告=2月4日、和歌山県警海南署

木下被告は17年ごろから21年3月まで木田被告の建築設計事務所の従業員で、木田被告とは上司・部下の関係にあり、21年4月、海南市職員に採用された。

そんな2人の間で長年続いた贈収賄が発覚しなかった背景に、木下被告が市で担当していた業務の発注方法がある。

市では当時、工事金額が100万円を超える発注は原則、競争入札としていたが、それより少ない額は、複数の業者から見積りを取った上で随意契約を認めていた。工事金額が30万円以下の場合は所管部署の専決決裁ともしていた。

部署の発注権限を事実上掌握していた木下被告は、発注の際、工事金額を競争入札などの必要がない30万円以下に分割。1人で随意契約で処理し、周囲への発覚を遅らせていた可能性がある。

贈収賄は今年2月3日、県警が2人を逮捕し、事件化した。

捜査関係者は「『隠蔽』というより、自分の権限で早く工事を進めようとしたからではないか」と別の動機の可能性も示唆するが、「30万円以下とはいえ税金が絡む。市のチェック機能が『働いていない』というより、『(機能が)なかった』と言える」と市のずさんな管理体制にあきれた。

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今回の事件で捜査関係者が「参考にした」と明かすのが、山梨県で令和2年、ごみ処理などを手掛ける一部事務組合で発覚した贈収賄事件だ。組合の元職員が、ごみ処理施設の修繕業務などを特定の業者に優先発注しただけでなく、発注した業務の一部を個人としても請け負い、その見返りに現金を受っていた。

今回の海南市の事件も、木下被告が元上司の木田被告の建築設計事務所に業務を優先発注。一部業務を個人として請け負っており、県警は「木下被告が下請けをする機会を与えた」構図を贈収賄と認定した。

公務員と業者の間に成立する通常の贈収賄とは異なるようにみえるが、別の捜査関係者は、木下被告が業務を通じて木田被告から利益を得ていた点を指摘し、「他の(贈収賄)事件と何ら変わりない。本質としては、公務員と業者との癒着があって成り立っている。公務員犯罪として問うべきだ」と言い切る。

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関係者によると、都市整備課の発注業務は、1級建築士の資格を持つ木下被告に頼り切っていたという。

ある市幹部は「我々の指導監督が『行き届かなかった』と指摘されても仕方がない」と悔やむ。また、当時の木下被告の仕事ぶりについて「いつも携帯電話で話をして、忙しそうにしていた」と振り返り、「果たして『悪いことをしている』と思っていたのか…」と語る。

神出政巳市長は事件後の市議会で「深くお詫び申し上げます。さまざまな改革を進め、市民のみなさまの信頼回復に努めたい」と陳謝した。

市では今回の事件を教訓とし、今年4月から、30万円以下の工事金額については契約内容を所管部署以外の部署でも再チェックするなど監視機能を強化。市職員倫理規定を導入し、再発防止に努めている。(藤崎真生)

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