ビブリオエッセー

親子で話そう、この大変な時代 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」ブレイディみかこ(新潮社)

日本では大人同士で貧困や差別について語り合うことはあまりないだろう。この本の舞台は前作に続き英国の地方都市。ブレイディさんの息子「ぼく」は13歳になったが親子の会話でそんな話題が出てくることに驚いた。

最初は粗大ごみを外に置くと移民の家族が取りに来るようになったエピソード。父親から不用品をまとめるよう言われた「ぼく」は、あげるならなぜ新品をあげないのかと悩み、母親である著者と話し合う。一対一の「あげる」と慈善センターにリサイクル品として持っていくときの心構えの違いについて。子供の疑問にきちんと答える姿勢に感心した。やがて近所から苦情を言われ、察したように移民も来なくなる。

学校ではピリオド・ポヴァティ(生理貧困)の支援に取り組む話や男女のどちらにも属さないと考えるノンバイナリーの教員のことなどが描かれている。日ごろから差別や貧困について考える土壌ができていると感じた。

スピーチのテストで「ぼく」の友人はポリティカル・コレクトネスを取り上げ、「ぼく」は「社会を信じること」をテーマにした。生徒自らが考えることに重点が置かれている。

図書館の建物が閉鎖され、ホームレスのシェルターに使うという自治体の説明会が開かれたところ、「界隈の住宅価値が下がる」「小学校のそばにホームレスのシェルターを作るなんてどういう了見だ」と騒動になったという。そのあと図書館には過激な落書きが増え、てっきり若者の仕業と思っていたら…。

大人たちの偏見は若者たちにも影響を及ぼすだろう。これらは英国の事例だが日本では隠れた形で根強く残っているように思う。子供たちを子供扱いせず、本気でしっかりと向き合う。大人たちの責務だろう。

神奈川県大和市 なっしー(53)

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