謎多きプーチン氏娘 資金隠しに利用か

経済フォーラムに映像を通じて参加したカテリーナさん=2021年6月、ロシア(ロイター)
経済フォーラムに映像を通じて参加したカテリーナさん=2021年6月、ロシア(ロイター)

ロシアによるウクライナ軍事侵攻が長期化する中、米政府は対露制裁についてプーチン大統領の娘2人の資産凍結などに踏み切った。プーチン氏の財産が家族名義で隠されている可能性があるためで、日本政府も足並みをそろえた。プーチン氏自身、家族について多くを語らず、30代とされる娘2人に関する情報の多くがベールに包まれている。

「プーチン氏の財産の大部分が家族を利用して隠されていると信じている。だからこそ家族を制裁の標的にした」。プーチン氏の娘2人に対する資産凍結などの制裁実施について、米政府高官はこう説明した。ロイター通信などが報じた。

身内にまで制裁対象が広がったプーチン氏はこれまで家族に対して多くを語ることはなかった。

「娘たちはロシア国内でのみ教育を受け、住んでいるのも国内。3カ国語を流暢(りゅうちょう)に話す。娘の人生は娘のものだ。娘について他人に話すつもりはない」

欧米メディアによると、プーチン氏は、2015年の会見でこう発言したが、娘の名前を明かさなかったという。2017年のテレビ番組では、孫の存在を明かし「1人は保育園に通い始めた」と述べるにとどめ、詳細には触れなかった。

プーチン氏は、旧ソ連の治安・情報機関「国家保安委員会(KGB)」職員だった1983年、客室乗務員のリュドミラさんと結婚。2年後の85年に長女のマリヤさん、翌86年に次女のカテリーナさんを授かったとみられている。

ただ、プーチン氏が通算3期目となる大統領に就任した翌年の2013年に離婚を公表。リュドミラさんは「夫は仕事漬けの日々を送っていた」と明かし、プーチン氏も「互いに顔を合わせることはほぼなく、それぞれ別々の人生を生きていた」と離婚理由を説明した。リュドミラさんは現在、再婚しフランスで生活しているとみられる。

娘2人のうち、カテリーナさんは両親が離婚した同じ年、音楽に合わせてダンスや技を披露する「アクロバット・ロックンロール」と呼ばれるスポーツの世界選手権で、5位に入賞したとされる。

サンクトペテルブルク大学で東洋学を専攻し、日本語を勉強したことでも知られる。天理大(奈良県)の2014年の報告書によると、アクロバット・ロックンロールの露代表団として、モスクワ大学副学長補佐の肩書で訪日したとされるが、当時は公式に発表されなかった。

ところが、近年、娘2人の公式の場での露出が目立っているという。

英BBCなどによると、カテリーナさんは2018年、ニューロテクノロジー(脳神経技術)について議論する国営番組に出演。21年には経済フォーラムに映像を通じて参加したという。マリヤさんも、モスクワの内分泌研究所に勤める医師として名前を連ね、子供の発育不全に関する共著も出したとされる。

「娘は政治やビジネスとは別世界で生きている」と明かすプーチン氏だが、マリヤさんは、ロシア国営の天然ガス企業に勤めた経験のあるオランダのビジネスマンと結婚。カテリーナさんもプーチン氏の長年の盟友の息子で、ロシア最大規模の石油化学企業の大株主と結婚したと報じられた。

ただ、娘2人は現在、ともに夫とは破局したものとみられる。

ロイター通信によると、米政府は娘2人への資産凍結実施などに際し、マリヤさんについて「露政府が支援する遺伝子研究プログラムのリーダーに就任しており、政府から資金提供を受けている」と指摘。カテリーナさんは「国防事業などを支えるハイテク企業の幹部」と判断している。

米政府は、プーチン氏と娘2人の関係を「別世界」ではなく、政権との強固なパイプを維持している点を重視したようだ。(植木裕香子)

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