北海道・知床半島沖で起きた観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」の遭難事故では行方不明者に加え、船体の捜索も続く。水中音波探知機(ソナー)の反応に基づき潜水調査をしたが、27日まで発見には至っていない。
現場海域は知床半島沿いに急斜面が多く、沖合は水深が100メートル以上になり、すり鉢状にくぼんでいる場所も。地形が平らでないため、海底にあてた音波の跳ね返りを利用して海中の異物を探すソナーでの捜索は限度がある。海保はより広範囲に深海まで探索できる測量船を投入する予定だ。
仮に発見できたとしても、深海の場合は船体の向きを確認した上、ロープをかける位置を工夫しなければ引き揚げ中に壊れる恐れもあり、作業には慎重さが求められる。
運航会社社長が初めて会見
運航会社「知床遊覧船」(斜里町)の桂田精一社長(58)が27日、同町のホテルで記者会見し、荒天となることが見込まれる中、海が荒れれば引き返すとの条件付きで、豊田徳幸船長(54)に出航を認めたことを明らかにした。「この度はお騒がせして大変申し訳ございませんでした」などと冒頭謝罪し、約2時間半に及ぶ会見で計3回土下座した。
23日の発生から5日目で、初めて公の場で取材に応じた。出航の経緯を説明した上で「今となれば、判断は間違っていた」と述べた。
桂田氏は、23日午前8時ごろに豊田船長と打ち合わせし「午後の天気が荒れる可能性があるが、午前10時の出航は可能」との報告を受けたと説明。船長に判断を任せる一方で、波浪注意報が出ているのを把握し、自ら海を見て平穏な波だと判断したと話した。
記者会見が遅れた理由については「被害者家族の対応と救助活動を第一に考えた」と釈明した。