南太平洋のガダルカナル島は、米国とオーストラリアを結ぶシーレーン(海上交通路)に位置する要衝だ。第二次世界大戦では、連合国の米豪を分断するため旧日本軍が同島に航空基地を建設し、ここでの攻防によって双方から計2万人以上の死者を出す激戦地となった。
80年後のいま、海洋進出を続ける中国が、この地に再び〝くさび〟を打ち込み、南太平洋地域を揺るがしている。
中国、要衝のソロモン諸島に「くさび」
震源となったのは、ガダルカナル島に首都を置くソロモン諸島と中国が署名した安全保障協定だ。両国は協定の詳細を明らかにしていないが、3月にSNSに流出した草案とされる文書は、周辺国にとって衝撃的な内容だった。ソロモン諸島が主権を中国に譲り渡すかのような権限を認めていたからだ。
流出文書によると①中国はその必要に応じて、ソロモン諸島に艦船を寄港させ、補給を行うことができる。中国側の人員や事業の安全を守るために武力を行使できる②ソロモン諸島は、社会秩序の維持や人命・財産の保護などのために、中国側に警察や武装警察、軍人の派遣を要請できる③ソロモン諸島は中国側の任務のために情報・補給上の支援を行い、職員の裁判権免除を認める-などと規定している。