独、ウクライナに大型兵器 難産の末に脱・平和主義

ドイツ政府がウクライナ政府に供与することになった対空戦車「ゲパルト自走対空砲」(ロイター)
ドイツ政府がウクライナ政府に供与することになった対空戦車「ゲパルト自走対空砲」(ロイター)

【パリ=三井美奈】ドイツ政府は26日、ロシア軍が侵攻するウクライナに「対空戦車」を供与すると発表した。ショルツ首相は「戦闘をエスカレートさせるべきではない」と長く難色を示していたが、国内外の圧力に追い込まれる形で決定した。大型兵器の紛争地への供与は、ドイツで戦後初めてとなる。

供与するのは、ゲパルト自走対空砲。キャタピラ車体にレーダーと砲台を搭載し、戦闘機や軍用ヘリコプターを攻撃できるため、「対空戦車」と呼ばれる。供与はランブレヒト独国防相が26日、ドイツ西部ラムシュタイン米軍基地で行われたウクライナ支援会合(40カ国以上が参加)で表明した。

ドイツは第二次大戦での敗戦後、平和主義に徹し、「紛争地に殺傷兵器は送らない」が原則だった。ショルツ氏はロシアによる侵攻を受けて2月、原則を転換し、ウクライナへの地対空ミサイル、対戦車砲の供与を決めた。戦局の変化に伴い、米英が最新鋭の重火器を追加供与するようになり、ウクライナはドイツに戦車や装甲車の供給を要請した。

ショルツ政権は中道左派主導で、戦車供与には慎重だった。今月初めに首都キーウ(キエフ)近郊で民間人殺害が発覚すると、第2与党、緑の党のベーアボック外相が姿勢を変えて、戦車供与を支持。第3与党、自由民主党も同調した。

一方、ショルツ氏の第1与党、社会民主党(SPD)は姿勢を変えず、SPDのランブレヒト国防相は「連邦軍の備えに不安をもたらす」「供与は同盟国と共に決めるべき」と要求をかわしてきた。SPDは東西冷戦中、ソ連との対話を通じた平和共存を目指すデタント(緊張緩和)を主導し、現在もロシア政経界とのつながりが深い。

だが、西欧では、ドイツと並んで大型兵器供与に慎重だったオランダやフランスも、自走砲や新型ミサイルの供与を発表。独連邦議会で保守系野党、キリスト教民主同盟(CDU)は「首相のせいで、ドイツは国際社会で孤立している」とショルツ氏のあいまいな姿勢を攻撃していた。世論調査では、大型兵器供与への支持は55%にのぼった。

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