「残虐行為悲しい」ユダヤ人関連団体、露に怒り

ロシア側の攻撃で壊滅的な被害を受けたウクライナ南東部のマリウポリ。軍用車両が列をなして進む=4月21日(ロイター)
ロシア側の攻撃で壊滅的な被害を受けたウクライナ南東部のマリウポリ。軍用車両が列をなして進む=4月21日(ロイター)

ウクライナに侵攻したロシア軍が街を破壊し、民間人まで殺害していることについて、第二次大戦中、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)を経験した世界のユダヤ人の関連団体が非難の声を上げている。ウクライナ国内ではホロコースト追悼施設も攻撃されたほか、ナチス・ドイツの強制収容を生き延びた高齢者も命を落としており、露軍への怒りは増幅している。

17施設が共同声明

英国立ホロコーストセンターや米イリノイ州ホロコースト博物館など4カ国の17博物館・施設は今月に入り共同声明を発表し、「ホロコーストから80年後、ウクライナで別の残虐行為があるのは悲しい。ロシア軍の殺人やレイプは戦争犯罪だ」と強く非難した。

17博物館・施設は声明を出した理由について「歴史の担い手である私たちが発言しなければ、使命を果たせなくなる」と強調。「戦争犯罪や人道に対する罪、ジェノサイド(集団殺害)に関する国際刑事裁判所の調査を支持する」と宣言した。

関連施設が砲撃

露軍が民間人を殺害するだけでなく、国内各地の街やホロコースト関連施設まで攻撃していることも、ユダヤ人関係者の怒りに拍車をかけている。

露軍が3月上旬、ウクライナの首都キーウ(キエフ)のテレビ塔を攻撃した際、近隣のバビ・ヤールのホロコースト追悼施設も被弾した。バビ・ヤールは、第二次大戦中にナチス・ドイツ軍により数万人のユダヤ人らが虐殺された場所。ユダヤ系のウクライナのゼレンスキー大統領はツイッターで「歴史が繰り返されている…」と嘆いた。

ユダヤ人関連施設の破壊については、国連教育科学文化機関(ユネスコ)も今月中旬、ウクライナ東部ハリコフ州にあるホロコースト追悼記念碑が攻撃されたと明らかにしていた。

80年前の生存者死去

露軍の2カ月にわたる戦闘では、ナチス・ドイツのホロコーストを生き延びた生存者が相次ぎ死亡する悲劇も起きている。

ハリコフに住むボリス・ロマンチェンコさん(96)は3月中旬、自宅を砲撃され死亡した。ウクライナ北東部スムイ近郊に生まれ、独ブーヘンバルトなど各地の強制収容所に収容されたが生き延び、近年は、ナチス・ドイツの戦争犯罪を後世に伝える活動に参加していた。ウクライナのクレバ外相はツイッターで、「言葉にならない犯罪行為だ。ヒトラーから生き延び、プーチンに殺された」とロシアを批判した。

激戦が続く東部マリウポリでも今月上旬、女性のバンダ・オビエドゥコバさん(91)が建物地下で避難中に死亡した。米紙ワシントン・ポストによると、体が弱るオビエドゥコバさんは「なぜこんなことが起きているの?」と、地下で震えながら娘に尋ねていたという。娘は「私たちには水もなく、電気もない。ただただ、動物(のようだった)」と、母との過酷な日々を振り返った。(本間英士)

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