ロボットアニメの金字塔「機動戦士ガンダム」の世界観をモチーフに、未来技術を掛け合わせながら社会問題の解決を目指すバンダイナムコグループの活動「ガンダムオープンイノベーション」(GOI)の取り組みに、大和大学(大阪府吹田市)の社会学部が加わっている。快適な都市づくりのための指標を作ったり、フードロス問題に取り組む学生を、次代を担う〝ニュータイプ〟な人材として支援したり。あふれ出るガンダム愛を原動力に、課題解決を目指すという。
アムロ、いきます。
「機動戦士ガンダム」は昭和54年にテレビアニメとして放映を開始した。舞台は人口増加や環境悪化から新天地を求めて人類が宇宙に進出する近未来。地球連邦軍と宇宙植民地の戦争と、壮大な人間ドラマを描いた物語だ。40年以上前に始まったシリーズながら、作中登場する社会問題は現代にも符合する。
バンダイナムコグループはGOIと銘打ち、これらの課題解決に向けて、昨年から企業などにアイデアを募集。250を超える企画の中から13企業・団体が選ばれ、「ガンダム公認」を得て宇宙やエネルギーなどの分野の課題解決に向けて取り組みを始めた。
大和大学社会学部では、地球環境学が専門の天野健作教授(48)や、アートと都市の研究を進める立花晃准教授(38)ら教員十数人と学生が「快適な都市やコミュニティーの創造」の分野で参加する。
大学の所在地である吹田市を、作中で人類が暮らす「スペースコロニー(宇宙の居住空間)」に見立て、持続可能な都市の発展を考察。地域づくりや防災を考えるうえで、自然のさまざまな機能を生かす「グリーンインフラ」の考え方を取り入れた指標を作成し、暮らしやすい町の条件を数値化するところから研究を進めるという。
天野教授は「指標を作ることで暮らしやすさという抽象的な概念が可視化できるようになる」と説明する。
私もニュータイプ
取り組みは研究だけにとどまらない。ガンダムシリーズでは主人公らが研ぎ澄まされた感覚を持つ「ニュータイプ」として覚醒し、時代を切り開く様子を描く。プロジェクトでは「夢に向かって挑戦し、次代を担う学生を『大和のニュータイプ』と位置付ける」(立花准教授)といい、地域や社会が抱える食品ロスの問題解決に取り組む学生の支援も始めている。
学生の中心となっているのは「大和のニュータイプ」の一人で、社会学部2年の永井琉太(りゅうた)さん(19)。規格外で廃棄予定だった淡路島産玉ねぎなどを使ったラーメンを開発している。
4月21日午後には、大和大学の家庭科室で試食会を実施。約30人の学生が集まった。5月27~29日に吹田市の万博記念公園で開催する「SAKANA&JAPAN FESTIVAL2022 in万博公園」で売り出すという。
廃棄予定の玉ねぎを使うことで、フードロスを考慮しつつも味わい深い一杯に仕上げた。
永井さんは「食糧危機の問題も深刻で、これまで当たり前に使えていた食材がなくなる可能性もある。将来に備えて昆虫ラーメンなども作ってみたい」とアイデアは尽きない。
このほか、賞味期限が近づき、買い手がつかなくなったチョコレートを買い取り、学内で安く販売する事業計画を立てる学生も。 大和大学は学内ベンチャー「ヴェリダス」を今春設立し、永井さんのような社会起業を目指す学生を支援している。天野教授は「学生のアイデアにフードロスという社会問題を乗せ、社会に還元できる形を目指したい」と話していた。
吹田市をスペースコロニーに見立てた研究にニュータイプ支援…。大和大社会学部では今後もガンダムにまつわるイベントを準備していくという。
バンダイナムコグループは3年後の2025年大阪・関西万博にガンダムパビリオンを出展する計画。万博では「宇宙世紀宣言」として、GOIの成果の一部を発表する予定だという。(木ノ下めぐみ)