官僚主導、打破できるか 新デジタル監に浅沼氏

デジタル監に就任し、牧島かれんデジタル相(左)と記念写真に納まる浅沼尚氏=26日午前、東京都千代田区
デジタル監に就任し、牧島かれんデジタル相(左)と記念写真に納まる浅沼尚氏=26日午前、東京都千代田区

政府は26日、デジタル庁の事務方トップ「デジタル監」の石倉洋子氏(73)の退任と、同庁で最高デザイン責任者(チーフ・デザイン・オフィサー=CDO)を務めた浅沼尚(たかし)氏(45)の後任就任を正式に発表した。退任と就任は同日付。石倉氏は就任から約8カ月という異例の短期での交代となった。浅沼氏には、官僚主導の霞が関の壁を壊して簡潔な行政サービスを構築するという難問が待ち構える。

牧島かれんデジタル相は同日の記者会見で、石倉氏について「本人に次の世代へ引き継ぎたいとの意向があった」と退任理由を説明した。

浅沼氏は東芝やIT企業「ジャパン・デジタル・デザイン」で工業デザインなどに携わった後、昨年9月のデジタル庁発足後にCDOに就任。新型コロナウイルスのワクチン接種証明アプリなどを指揮した。

会見で浅沼氏は、生活者視点で行政サービスを作ることや、そのために官民で協力したチームを作ることを目標に掲げた。

しかし、浅沼氏の前に立ちはだかるハードルは高い。デジタル庁は民間出身者が250人と職員全体の約3割を占めるが、「政策の意思決定は役人が主導する」(政府関係者)とされ、民間出身の浅沼氏が政策決定プロセスで主導権を握るのは困難という見方がある。デジタル監は、官僚トップのデジタル審議官とデジタル相に比べて「実態の権限が小さい」(政府関係者)という指摘もある。

牧島氏は「デジタル庁の組織の在り方として、これが完成形であるということはない」と述べたが、旧来の政策決定プロセスの改革まで踏み込まなければ、デジタル監は存在感を発揮できず、民間の経験を行政サービスに生かす狙いが絵に描いた餅となりかねない。

(大坪玲央)

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