「感謝と平和」胸に演じる ウクライナから避難のバレエ講師

日本への感謝を述べるヴェルラン・ユリーアさん=26日午後1時5分、都庁(大森貴弘撮影)
日本への感謝を述べるヴェルラン・ユリーアさん=26日午後1時5分、都庁(大森貴弘撮影)

ロシアによる軍事侵攻でウクライナから日本に避難してきたバレエ教師、ヴェルラン・ユリーアさん(34)が26日、東京都庁で記者会見を開き「日本に来て本当に安全だと感じた」と受け入れに感謝を述べた。来日を支援した東京都武蔵野市のバレエスタジオ主宰、岡本るみ子さん(67)は30日に同市内でウクライナを支援するためのチャリティーバレエイベントを開催する予定で、ユリーアさんも出演する。(大森貴弘)

ウクライナの首都キーウ(キエフ)出身のユリーアさんは、国際スラブ大学バレエ教師科を卒業後、キーウ市立アカデミーオペラ・バレエ青少年劇場に所属し、国内外の公演で主演を務めてきた。国際バレエコンクールで審査員をしていた岡本さんと知り合ったことが縁で、平成29年以降4回にわたって来日。公演に加え、岡本さんの教室で指導もしていた。

ロシアによる侵攻が始まると、キーウでは1日に10回以上空襲警報が鳴ることもあり、そのたびに自宅マンションの地下シェルターに避難した。「自宅は無事だったけど、周りの家は空襲でどんどん壊された。いつも心臓がバクバクし震えも止まらない。怖くてたまらなかった」。ユリーアさんはこう振り返る。

状況が悪化する中、3月15日に母親(58)とともにキーウを脱出。ウクライナ西部のウジホロドを経由し、ハンガリーの友人を頼って避難した。

心配した岡本さんがユリーアさんに連絡すると、「助けてほしい」と申し出があったことから、岡本さんはハンガリーの日本大使館に嘆願書を書くなど、来日のためのビザの取得をサポートしたという。

ハンガリーに2週間滞在した後、岡本さんの支援で4月16日に来日したユリーアさん。来日後は、2カ月近くできなかったバレエの練習に再び打ち込めるようになった。現在はホテル暮らしだが、5月中旬以降は都が用意した都営住宅に入居するという。岡本さんの教室で指導者として働きながら、可能な限り日本で暮らすつもりだ。

岡本さんは元々、30日に教室の生徒たちによるバレエの発表会を開催する予定だったが、ユリーアさんの来日を受け、急遽(きゅうきょ)チャリティーコンサートとし、入場料はウクライナにいる障害者の支援のためウクライナ大使館へ寄付することにした。内容も、ユリーアさんへのインタビューのほか、「祈りの踊り」を演目に追加した。

「ウクライナで犠牲になった全ての人に思いをはせるイベントにしたい」と岡本さん。ユリーアさんは「日本の皆さんのサポートに感謝すると同時に、ウクライナの平和をともに祈る気持ちで演じたい」と話している。

チャリティーコンサートは武蔵野市民文化会館大ホールで30日午後4時開演。入場料は3千円。問い合わせは岡本るみ子バレエスタジオ(電話0422・46・6649)。

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