「伊丹十三賞」の玉川奈々福さん 心に響く浪花節

松山市で独演会を開いた浪曲師、玉川奈々福さん =4月12日午後、松山市
松山市で独演会を開いた浪曲師、玉川奈々福さん =4月12日午後、松山市

「お葬式」「マルサの女」といった作品で知られる映画監督、伊丹十三さんの記念館が松山市にある。俳優、エッセイスト、商業デザイナー、テレビマンなど多彩なジャンルで才能を発揮した伊丹さんにちなんで設けられた「伊丹十三賞」の第11回受賞者、浪曲師の玉川奈々福さんが松山市で受賞記念の独演会を開いた。

同市総合コミュニティセンターで4月12日に開かれた独演会には、新型コロナウイルス対策として観客席を制限したものの、ほぼ満席の約400人が訪れた。同市での浪曲口演は珍しく、曲師(三味線奏者)の沢村美舟さんとともに登壇した玉川さんは「落語、講談、浪曲が日本の三大話芸といわれる。このうち、浪曲は三味線の音楽的要素があるのが特徴。歌うような節とたんかでおりなす芸です」と紹介していた。

同賞は平成20年に創設された。文化活動全般を対象に、年に1人のペースで受賞者を選出してきた。これまでに、糸井重里さん▽タモリさん▽内田樹さん▽森本千絵さん▽池上彰さん▽リリー・フランキーさん▽新井敏記さん▽是枝裕和さん▽星野源さん▽磯田道史さん▽玉川奈々福さん▽宮藤官九郎さん▽清水ミチコさん-が賞を受けている。

口演する玉川奈々福さん(左)と曲師、沢村美舟さん =4月12日午後、松山市
口演する玉川奈々福さん(左)と曲師、沢村美舟さん =4月12日午後、松山市

玉川さんは「現代の観客の心を揺り動かす語りの芸と、浪曲に新たな息を吹き込む卓越したプロデュース力」を高く評価され、第11回の受賞者となっていた。

松山市でのイベントはこれまでコロナ禍で開催がかなわなかったが、「ほとばしる浪花節 玉川奈々福独演会」として今年4月にようやく実現した。

玉川さんは同賞に選出されたことについて、「本当にびっくりしました。私もなんとか浪曲を面白くするため、これからも活動をしていきたい」と話していた。

平成30年、玉川さんは文化庁の文化交流使に指名され、イタリアなど欧州7カ国を歴訪した。その体験をもとに、「ヨーロッパには伝統芸能があっても上書き更新されている。能は650年、狂言は600年の歴史があり、浄瑠璃は江戸時代、浪曲は明治からずっと続いています。こんな国は世界中ですごく珍しい」と、日本の伝統芸能のすばらしさを強調。古典「仙台の鬼夫婦」、新作「金魚夢幻」を披露した。

伊丹さんのさまざまな面を見ることができる展示
伊丹さんのさまざまな面を見ることができる展示

観客は玉川さんと三味線の沢村さんの息の合った掛け合いに聞き入り、浪花節を堪能した。コロナ対策のため声をかけることはできなかったが、盛んな拍手を送っていた。

伊丹さんは昭和8年、京都市で生まれた。父の映画監督、伊丹万作さんが死去した後、少年期を松山市で過ごしている。20歳で上京し、次第にさまざまな分野で才能を発揮するようになっていった。映画監督としてデビューしたのは51歳のとき。その作品「お葬式」は日本アカデミー賞、キネマ旬報ベスト1など多くの賞を受けた。以降、「タンポポ」「マルサの女」「あげまん」など10作品を監督した。

平成9年に64歳で死去した。妻で女優の宮本信子さんが館長を務める記念館は平成19年にオープンした。常設展では、遺品などを展示し、伊丹さんの足跡をたどる構成となっている。広く知られる文化的な業績のほかに、料理通、乗り物マニア、猫好きといった一面も知ることができる。(村上栄一)

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