日露戦争でロシアのバルチック艦隊を率いたのは、ロジェストウェンスキー司令長官である。日本人の多くは、その名を司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』で知った。司馬さんは、日本海海戦で連合艦隊を見事に指揮・統率した東郷平八郎司令長官と比較して、「敗軍の将」に手厳しい。
▼「東郷の奇術の前にほとんど無策」といった具合である。数百発の砲弾を受けた旗艦「スワロフ」内で重傷を負い駆逐艦に乗り移る。結局日本側に発見され捕虜となった。終戦後敗戦の責任を問われ軍法会議にかけられたものの無罪となった。ただ批判の声はやまず失意のうちに生涯を終える。
▼ウクライナに侵攻中のロシアは今月14日、黒海艦隊の旗艦である巡洋艦「モスクワ」の沈没を発表した。ロシア艦隊の旗艦が戦時に沈没するのは、日露戦争で撃沈された「スワロフ」以来だという。ロシア国防省は、火災により搭載した弾薬の爆発が原因と説明している。