岸田文雄首相は26日、事業規模13兆円の総合緊急対策を発表した。ロシアのウクライナ侵攻などを受けた原油高や物価高は新型コロナウイルス禍からの回復を目指す日本経済に影を落としており、下支えするのが狙い。首相は、今年最大の政治決戦となる夏の参院選を前に〝守り〟を優先している。
「コロナの再拡大や、ウクライナ情勢の長期化に伴う原油価格、物価のさらなる高騰の可能性など状況は予断を許さない。国民の安心を確保する必要がある」
首相は26日の記者会見でこう強調した。
昨年秋の就任以降、コロナ禍からの経済再生を目指す首相にとって誤算だったのが、感染力の強いオミクロン株による「第6波」に加え、ロシアのウクライナ侵攻だった。
原材料価格の高騰や円安が加速し、国民生活や企業活動の重荷になっている。ウクライナ支援に対する理解や、コロナの感染が減少傾向にあるため、報道各社の世論調査で内閣支持率は好調だが、対応を誤れば参院選に影響しかねない。
首相は当初、令和4年度予算の予備費を使用して迅速に対策を実行する考えで、選挙前で国会の会期も限られる中での補正予算編成には消極的だった。選挙目当てと捉えられる上、首相が出席する予算委員会が開かれれば、野党に追及の機会を与える恐れもあるからだ。
だが、連立政権を組む公明党が参院選前の本格的な補正予算編成を要求。首相は側近の木原誠二官房副長官に公明との調整を委ね、最終的に予備費の穴埋めなどが中心の補正予算の編成で決着した。
一方、首相は感染が一定程度ある中で経済社会活動を進める「ウィズコロナ」を目指すが、道半ばだ。
政府は今月末からの大型連休で、3年ぶりに都道府県を越える移動自粛を呼びかけなかった。だが、新型コロナの感染症法上の位置付けを現在の「2類相当」から季節性インフルエンザ並みの「5類」に緩和することには慎重な姿勢を崩していない。厚生労働省関係者は「有効な経口薬ができないと難しい」と語る。
「参院選前までは手堅く、守り優先でやっていくしかない」
首相側近の1人は首相の胸の内を語る。(田村龍彦)