北川信行の蹴球ノート

年齢、性別関係なし、セレッソアカデミー「スペトレ」が描く未来

スペトレで風間八宏技術委員長の指導を受けるアカデミーの選手=20日、大阪市此花区(北川信行撮影)
スペトレで風間八宏技術委員長の指導を受けるアカデミーの選手=20日、大阪市此花区(北川信行撮影)

サッカーJ1、セレッソ大阪のアカデミー(育成)や普及部門を束ねる一般社団法人、セレッソ大阪スポーツクラブが年齢や性別にとらわれないユニークな練習法を取り入れている。通称「スペトレ」。指導するのは元日本代表MFで、川崎フロンターレや名古屋グランパスの監督も務めた風間八宏・セレッソ大阪アカデミー技術委員長。小学生から高校生までの各年代のチームや、女子のレディース、ガールズから選ばれた選手が同じグラウンドに集まり、ボールを「止める」「蹴る」といった基本から、技術を高め、個の力をつける特別なトレーニングに取り組んでいる。

陣頭指揮を執る風間技術委員長は「チームの練習だけでは絶対に足りない。あって当たり前、そして絶対の技術を持たないといけない。どんどん突き詰めてほしい」と選手の成長に期待する。南野拓実(現リバプール)や山口蛍(現ヴィッセル神戸)柿谷曜一朗(現名古屋)らを輩出した名門のアカデミーから、「スペトレ」を通じて新たな逸材が生まれるかもしれない。

「止める」「蹴る」大切に

スペトレでアカデミーの選手を指導する大久保嘉人技術委員=20日、大阪市此花区(北川信行撮影)
スペトレでアカデミーの選手を指導する大久保嘉人技術委員=20日、大阪市此花区(北川信行撮影)

4月20日午後6時半。夕暮れが迫ってきた舞洲(大阪市此花区)のヤンマー桜グラウンドに、セレッソ大阪のアカデミーに所属する46人の選手が集まった。各カテゴリーの指導者が選んだ選手たちで、内訳は小学生9人、中学生14人、高校生16人、レディース1人、GK6人。この日は風間委員長のほか、昨季限りで現役を引退し、アカデミー技術委員に就任した元日本代表FWの大久保嘉人さんが初参加し、元Jリーガーで、今はユーチューバーとして活躍する那須大亮さんも訪れた。

選手らは事前に振り分けられた色のビブスをつけて練習開始。「正確にボールを止める。ちょっとずれただけで、蹴れなかったり、相手に寄せてこられたりする」「自分なりの(ボールの)置きどころをつくるのが大事。自分の場所をしっかり身につける。こだわるかどうかで変わってくる」といった風間技術委員長の教えを受け、4人一組になってボールを足元で止め、味方にパスを出す練習を繰り返す。その後はパス交換からのシュート練習やミニゲームを実施。たっぷり2時間のメニューで「自分の技術を武器にする。ダメだったことは忘れていいから、うまくいったことを覚えて」と風間技術委員長。初めて子供たちを本格的に指導した大久保技術委員は「できたことに常にチャレンジしていこう」などとアドバイスを送った。

間違いなくプロに

スペトレで練習する参加者ら=20日、大阪市此花区(北川信行撮影)
スペトレで練習する参加者ら=20日、大阪市此花区(北川信行撮影)

特別な空間の特別なトレーニング「スぺトレ」は、昨年1月に就任した風間技術委員長が考案。昨夏に第1回を実施したが、新型コロナウイルス禍もあり、昨年は4回の開催にとどまった。メンバーを入れ替えながら今年は3月に初開催し、報道陣に公開された4月20日が2回目のトレーニングだった。

「ここは日常ではないところ。(いろんな年代の選手と一緒にトレーニングすることで)味方がどんな個性があるかを見抜かなければならない。技術と判断が大事になる」と「スペトレ」の意義を話した風間技術委員長は「下の年代の子供たちにとって有益と言われるが、年上の選手がいかに難しいか。(味方の年下の選手が)どのくらいの速さで走れるかとか、どのくらいの強さのパスを出したら受けられるかとかを常に考えなければならない。周りをうまく楽しませてくれる選手は間違いなくプロになる」と太鼓判を押す。

一方、川崎時代に風間技術委員長の薫陶を受けた大久保技術委員は「教えるのは楽しかった」と振り返り「みんなうまかった。この年齢から風間さんの指導を受けられるのは幸せだと思う。こんなにサッカーは楽しいんだと思える。スピードにも慣れて普通にプレーできるようになり、成長が早いんじゃないかなと思う」と参加した選手たちにエールを送った。

海外遠征も視野に

スペトレで大久保嘉人技術委員と練習するアカデミーの選手=20日、大阪市此花区(北川信行撮影)
スペトレで大久保嘉人技術委員と練習するアカデミーの選手=20日、大阪市此花区(北川信行撮影)

「スぺトレ」には、ふだんはアカデミー傘下の別々のチームで練習に取り組んでいる指導者が、同じ方向を向いて子供たちを教えられるようになる利点もある。今後は月1回のペースで開催していきたい考えで、風間技術委員長は「チームを組んで対外試合を取り入れていきたい。ゆくゆくは海外にも遠征したい」と青写真を描く。

2回目の参加だった10歳の大村憲信君は「1回目より2回目の方が、相手の間で(ボールを)受けられるようになった。ボールをしっかり止めることで、(パスを出す)余裕が生まれる。将来はセレッソ大阪でプロになりたい」と感想。なでしこリーグの試合にも出場している15歳の栗本悠加さんは「緊張したが、楽しかった。止める、蹴るを徹底的にやっていこうと思った。縦への突破だったりに生かしたい。レディースで先発メンバーに選ばれ、世界で通用する選手になりたい」と抱負を語った。

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