26日決定した緊急経済対策は物価高対策などに国費6兆2千億円を充てるが、小手先の対症療法に効果を疑問視する声が上がっている。昨年来のインフレはウクライナ危機で長期化する可能性が高く、日本でも生活必需品の値上げが続くとみられるからだ。物価高と景気悪化が重なる「スタグフレーション」を防ぐには賃金上昇を後押しし、低迷する潜在成長力を押し上げる構造改革が欠かせない。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、今回の対策の実質国内総生産(GDP)押し上げ効果は3600億円分にとどまると分析する。
6兆2千億円のうち、低所得世帯の子供1人当たり5万円を給付する事業などは令和4年度予算からも財源を出しており、新たに確保した予算は2兆7千億円程度。このうち、1兆5千億円は今回取り崩した予備費の補塡(ほてん)分となる。新型コロナウイルス禍で講じた一連の経済対策と比べ、規模で見劣りするのは確かだ。
それでも政府は対策の柱となる原油高対策で、4月以降は2%の大台に乗るとみられる消費者物価上昇率を0・5ポイント抑制すると予想するなど効果を強調する。
ただ、補助金の対象となるガソリンと灯油は家計のエネルギー関連支出の3分の1に満たず、ガソリン以上に負担がかさんでいる電気代やガス代の値上げに対する家計支援策は盛り込まれなかった。ウクライナ危機に伴う穀物価格上昇が食品価格に本格的に転嫁されるのも夏以降の見通しで、対策から漏れた分野で不満が出るのは避けられない。
原油高と輸入物価の上昇を助長する円安の流れは年内いっぱい続くとも指摘される。政府は6月に策定する「新しい資本主義」の実行計画を踏まえ、夏の参院選後に改めて経済対策を編成する方針だが、今回のような弥縫策(びほうさく)を繰り返せば財政負担が膨らむばかりだ。
物価高に国民の不満が高まるのは、企業の賃上げが追い付かず所得環境が悪化しているため。政府には当面の対策と並行し、デジタル化や脱炭素化の推進による生産性向上といった成長戦略で成果を上げていくことが求められる。(永田岳彦)