EV元年

㊦EV化で部品メーカーに暗雲…新事業探る

ファインシンターはコオロギ粉末を使用した昆虫食事業を展開する=4月4日、愛知県春日井市(宇野貴文撮影)
ファインシンターはコオロギ粉末を使用した昆虫食事業を展開する=4月4日、愛知県春日井市(宇野貴文撮影)

コオロギラーメン

鍋で湯を沸かし、ちぢれ麺がほぐれたら熱湯で丼の中の粉末スープを溶かす。麺を丼に移してお好みの具を載せ、ラーメンの出来上がり。しょうゆ味のスープは香り高くコクがあり、食欲をそそる。

どこにでもある即席ラーメンのようだが、実はほかでは食べられない特色がある。スープにコオロギの粉末が混ぜ込まれているのだ。その名も「コオロギラーメン」。それだけでも異色だが、さらに驚くことがある。スープには自動車部品メーカーの技術が生かされているのだ。

開発したのは、トヨタ自動車グループでエンジンや変速機部品を主に手掛けるファインシンター。金属粉末を配合して金型に押し込み、高温で焼き固めて高精度部品をつくる粉末冶金(やきん)技術を活用。昨年、コオロギを粉末化して練り込んだ「コオロギスナック」を開発し、本社を構える愛知県春日井市のふるさと納税の返礼品限定で提供した。

第2弾となるラーメンは市のふるさと納税の返礼品のほか、市内の一部店舗やウェブなどでも販売。今後はコオロギをペットフード、サプリメント、化粧品などにも活用できないか可能性を探っている。

自動車部品メーカーが、〝脱自動車〟を模索している。自動車産業は電動化や自動運転など「CASE(ケース)」と呼ばれる次世代技術で競争が激化し、「100年に1度」といわれる変革期にある。

電池とモーターで動く電気自動車(EV)はエンジンや変速機などの複雑な機構が不要で、ガソリン車で3万点とされる部品点数が大幅に減る。新たな事業の柱を見つけなければ、会社の存続さえ危ぶまれる。そんな危機感が多くの部品メーカーを覆っている。

ファインシンターがコオロギにたどり着いたのも、そうした危機感が背景にある。若手社員の斬新な発想を取り入れて新規事業を模索。食糧難の解決策ともされる昆虫食に着目した。低糖質、高タンパクで栄養価も高いコオロギは昆虫食で最もメジャーな存在で、事業拡大につなげやすい。油分が少なく粉に加工しやすいので、自社の粉末加工と熱処理のノウハウを生かせると考えたのだ。

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