石仏は語る

現世と未来の関係にある極楽表現 花之木三尊磨崖仏

花之木三尊磨崖仏
花之木三尊磨崖仏

花之木小学校前の小道を西側に進むと、大和と伊賀を結ぶ月ヶ瀬街道が通っています。そこに自然石の花崗岩(かこうがん)があります。幅約8メートル、奥行き約7メートル、高さ約3メートルの巨岩です。南面する偏平(へんぺい)な岩肌に幅約220センチ、高さ約150センチ、深さ約15・5センチの隅切りをした枠を彫りくぼめて、向かって右側から釈迦如来、阿弥陀如来、地蔵菩薩を厚肉彫りし、左側には五輪塔が薄肉彫りされています。

釈迦如来立像の右手は施無畏印(せむいいん)、左手は与願印(よがんいん)で頭光を負います。両脇には宝瓶に活けられた三茎蓮華(さんけいれんげ)を供花として刻み、ここでは過去仏を表現しています。阿弥陀如来立像は蓮華座上に立ち、来迎印を結んで、面相や両手、衲衣(のうえ)などが細かく表現されています。阿弥陀如来を中尊にし、極楽浄土にあってすべての衆生を受け入れ、臨終に際しては現世に来迎するという阿弥陀信仰が強調されます。

ここでは未来仏として、現世と未来の関係にある極楽を表現します。地蔵菩薩立像は右手に錫杖(しゃくじょう)、左手に宝珠を持ち、地蔵菩薩の円光左右に「徳治第一(1306)年月日/願主沙弥六阿弥」の銘文があり、鎌倉時代後期の遺品です。地獄からの救済とする関係がみられます。

地蔵菩薩の下部両側に、合掌する供養者とみられる坐像が左右2体ずつ彫られています。諸仏間には、両脇に三茎蓮華をさした宝瓶が供花として添え彫られ、この三仏を並べて、釈迦如来が過去仏、阿弥陀如来が未来仏であり、地蔵菩薩は釈迦入滅から弥勒菩薩が下生するまでの間、衆生を救済し極楽浄土へ導く往生を祈願しているとみます。

右側には、檀上積基壇の隅切り枠を彫りくぼめた中に、高さ約121センチの五輪塔を薄肉彫りとします。各輪に梵字を刻んでおり、死者が空風火水地の五大元素へ帰っていったことを象徴的に示しており、供養の意味が込められます。なお岩面の四隅に方形孔が見られ、ここに柱を差し込み、ひさし状の覆屋(おおいや)が架かっていたと考えられます。(地域歴史民俗考古研究所所長 辻尾榮市)

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