「情報提供ない」家族怒号 荒れる海、漁船も捜索 知床事故

北海道・知床半島のカシュニの滝=24日午後4時42分(共同通信社ヘリから)
北海道・知床半島のカシュニの滝=24日午後4時42分(共同通信社ヘリから)

世界遺産・知床の雄大な景観を楽しんでいたはずのツアーが一転、悲劇に見舞われた。北海道斜里町の観光船「KAZU Ⅰ(カズ・ワン)」が浸水し、乗客乗員26人が安否不明となってから一夜明けた24日、現場周辺の海域で10人が発見され、全員の死亡が確認された。無事を祈る家族らの願いは届かず、やり場のない怒りをぶつける場面も。悪天候の中、運航会社はなぜツアーを決行したのか。事故原因の究明に向けた動きも加速した。

「どういう対応になっているのか。情報提供がされていない!」

24日午後0時50分ごろ、現地対策本部が置かれた斜里町役場ウトロ支所に、安否不明者の親族とみられる男性の怒声が響いた。直前には斉藤鉄夫国土交通相が支所に到着。現地職員らに「家族は心配している。気持ちに配慮しつつ支え、情報提供に努めてください」と訓示したばかりだった。

国交相とも面会したという男性は支所を立ち去る際、「情報が何にも伝えられていない。今はただただ苦しい」と声を絞り出した。支所にはその後も、乗客の関係者とみられる人たちが次々と訪問。うつむき、目に涙を浮かべている女性の姿もあった。

同2時ごろ、視察を終えて取材に応じた斉藤国交相は「(家族から)自分たちの気持ちに寄り添って対応してほしいと強い要請があった」と述べた。

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観光船の捜索は海上保安庁の巡視船と自衛隊機が夜通し行い、一夜明けた24日午前6時ごろには、別の観光船や漁船が捜索に協力するためウトロ港を出て現場海域に向かった。ただ、この日も風が強く、同10時半ごろには引き揚げてくる船もあった。

地元漁協関係者は「今日もかなり海は荒れている」と厳しい表情で語り、観光船の男性船長(63)も「もちろん助かってほしいが、漂流物も見えない」と声を落とした。救命具を見つけたという漁師の20代男性は「(カズ・ワンの)船長は操船の技術や危険への認識が甘かったのではないか」と語った。

そんな中で、知床岬近くの海上や岩場で乗客とみられる人が次々に見つかる。海上からダイバーがヘリに乗り込み、発見者を搬送する様子も見られた。

同10時半ごろ、発見者3人を乗せた自衛隊のヘリコプターが町立知床ウトロ学校のグラウンドに到着。救急隊員らが担架とブルーシートを持って駆け寄り、救急車で約30キロ離れた同町国民健康保険病院へと急いだ。

午後2時45分ごろ、この日最後の1人が見つかり、発見者は計10人に。同5時には、海保が10人全員の死亡が確認されたと発表した。ウトロ港近くの観光客ガイド、小林三希子さん(46)は「昨日の段階で見つかっていなかったので厳しいとは思ったが、本当に残念だ」と悲痛な表情を浮かべた。

斜里町によると、ツアーの参加者は北海道内のほか、東京都や大阪府、福岡県など全国各地にわたっている。遺体が安置されている斜里町B&G海洋センターにはこの日、8グループ32人が遺体の確認に訪れたといい、安否不明者の関係者とみられる人たちが体を寄せ合うように中に入る姿があった。

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国交省は午後4時15分すぎ、カズ・ワンを運航する「知床遊覧船」に対し、海上運送法に基づく特別監査を実施。職員5人が港近くの事務所に入り、約2時間後の同6時10分に退出した。職員の一人は「見える範囲の書類を確認している。今日はいったん中断し、明日以降も継続して実施する」と説明した。

乗客乗員のうち、残る16人は安否不明のままだが、札幌管区気象台によると、26日以降は発達する低気圧に伴って風が強まり、捜索に支障が出る可能性がある。カズ・ワンの船長と面識がある男性(61)は「何とか無事に帰ってほしい」とうつむいた。

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