急増する「超スピード配達」を担うダークストアが、都市で新たな問題の“火種”になっている

動き出したアムステルダム市

アムステルダム・ウエストで苦情が増えたことを受け、市職員のメラニー・ファン・デル・ホルストは該当の地域を訪ねた。「そこでこれは深刻な問題であり、単なる苦情として済ませてはならないと気づいたのです」と、ファン・デル・ホルストは語る。

ファン・デル・ホルストの担当の地域では現在9社の宅配会社が営業しているが、食料品を短時間で配達する会社の急拡大は、Airbnbがこの地域で急速に普及しさまざまな問題を引き起こしたときと似ているという。そうした問題がきっかけとなり、アムステルダム市当局は市民が自宅を貸し出せる日数の上限を年間30泊とする新しい規制を20年に施行した。

「素早く行動して厳しい規制を施行しなければならないのだと、Airbnbの件でわかりました」と、ファン・デル・ホルストは言う。そして、宅配アプリを運営する企業によるダークストアの新規開設を禁じる今回の措置は、市当局が新たな政策を策定するまでの時間を稼ぐためのものだという。

現時点では、ダークストアを取り締まったり開設場所を制限したりする方法はないのだと、禁止措置を導入したアムステルダム副市長のマリーケ・ファン・ドーニンクは言う。「わたしたちの街は小さくまとまっていて、住宅街の空き物件はダークストアを適切に収容できる空間や建物であるとは限りません」

専用の倉庫をつくるという解決策

地元の当局者と住民、配達員は、ダークストアの場所がよくないことが問題だと口を揃える。Gorillasの配達員だったラビディは、配達員の自転車が道をふさいでいると近隣住民からたびたび苦情を受けていたと言う。「人が歩く場所以外に自転車を停められる場所がなかったのです」と、22歳のラビディは語る。「住民ではないわたしでさえ、これにはいらいらしていました」

専用のダークストアをつくることで問題を解決できる可能性があると、不動産サービス会社JLLのEMEA地域のサプライチェーンディレクターを務めるアシュリー・スマートは語る。「既存の区画や建物を転用したり、駐車場などの土地を買い取ったりする方法を検討しています」と、スマートは説明する。そうすれば、エレベーターや荷物の積み下ろし場所、電気自動車(EV)の充電ポイントなど、アムステルダムのような場所にあるダークストアに欠けているものを提供できると、スマートは考えている。

だが、こうした解決策には時間がかかる。ダークストアの新規開設を一時的に禁じることで問題の拡大は防げるかもしれないが、既存の拠点で生じている緊張関係は緩和されないだろう。むしろ、悪化するかもしれないというのが、宅配会社のひとつであるFlinkの考えだ。

「アムステルダムやロッテルダムでのわたしたちの宅配サービスの需要は高いです。市の決定により拠点を増やせなくなったので、既存の拠点にしわ寄せがいくと思います」と、Flinkの広報担当者は説明する。

アムステルダム東部のZappの拠点から約20mの場所に暮らすヤン(仮名)は、Flinkの主張には一理あると言う。ヤンによると、近くのZappのダークストアは倉庫が手狭であることから移転の準備をしていたのだ。「ところが、新規開設を禁じられたので、別のよりいい場所に移転できなくなってしまったのです」

この6カ月間、ヤンは騒音のせいで眠れず、医師から処方された睡眠薬を飲んでいるという。「ないと眠れないので、薬を飲むほかありません」

(WIRED US/Translation by Madoka Sugiyama/Edit by Nozomi Okuma)

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