急増する「超スピード配達」を担うダークストアが、都市で新たな問題の“火種”になっている

住民のエリザベスは昨秋のある夜、ファーゲルストラートにあるZappのダークストアの従業員に大きな音を出さないよう伝えた。すると、「苦情をやめなければ友人たちをエリザベスのアパートに向かわせる」と、制服を着た人物(配達員も倉庫スタッフも同じ制服を着ている)に言われたという。

「具体的に何をするとは言いませんでしたが、脅迫的だったことには違いありません」と、エリザベスは語る。実際、Zappのダークストアに出入りしている人物に、何度か夜遅くに家まで尾行されたという。エリザベスによると、ほかの女性住民たちからも、セクハラされたりやじを飛ばされたりしたとの苦情が出ている。

Zappはセクハラを一切認めないポリシーを掲げている。このためファーゲルストラートのダークストアで住民と配達員との間に争いが起きていると聞いて「驚いた」と、Zappの戦略担当バイスプレジデントのスティーヴ・オヘアは言う。「住民とは早い段階から定期的に会っており、話し合いではかなり友好的な関係を保っていましたから」

ダークストアの開設を禁止する動きも

アムステルダムの住民はダークストアの従業員と衝突しているが、ほかの都市の住民は単に騒音や歩道を占拠する自転車に迷惑しているだけだ。それでもこうした近隣トラブルは、地元の政治家がダークストアの急速な拡大に歯止めをかけようと動く動機となっている。

アムステルダムが欧州で初めてダークストアの新規開設を1年間禁じた都市になったのは、1月27日のことだった。この決定は規制の流れをつくり出している。それから1週間後、ロッテルダムも同じくダークストアの新規開設を禁止している。2月半ばの報道によると、デン・ハーグやフローニンゲン、アーネム、アムステルフェーンも、特定の地域でのダークストアの開設を禁止する政策を検討しているという。

このような政策が広まれば、食料品を素早く配達する事業モデルにとって問題になる。10〜20分以内に注文を届けるというアプリの目標を達成するために宅配会社は住宅街に拠点を置くが、それは地元の住民にこうした拠点の近隣に住むことを強要することでもある。

アムステルダムのいたるところで住民とダークストアの従業員との対立が深まっている様子を、配達員も見ている。29歳のアフマド・アラベド・アルムヒメッドも、そのひとりだ。アムステルダム・ニーウ=ウエストを担当するZappの配達員として21年10月に1カ月間働いていたアラベド・アルムヒメッドは、その短い期間でも住民とZappの従業員が争う様子を見たという。

ある住民が倉庫に卵を投げつけると、配達員6人が駆けつけて住民と対峙した。「6人は住民が暮らす建物に押し入ろうとしていました」と、アラベド・アルムヒメッドは言う。この件に関してZappはコメントを差し控えている。

Gorillasの配達員として5カ月働いた学生のラムジー・ラビディによると、街なかで注文された商品を配達しているときに受ける「不気味で人種差別的なコメント」を気にする配達員もいるという。「一部の配達員はストレスがたまり、この状況をどうにかしようと攻撃的になるのだと思います」と語るラビディは、これが一部の配達員が住民とけんかする動機になっているのかもしれないと指摘する。この件についてGorillasはコメントを差し控えている。

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