クルージング船「はくちょう」と岸壁の係留柱を結ぶロープワークの手際がみごとだ。大阪府立青少年海洋センター(岬町)でアウトドアインストラクターとして活躍する今村佳代さん(30)。多様なスキルを生かし、子供たちが大自然と触れ合う環境教育に全力で取り組んでいる。
自然の中で幼児の素晴らしい感性を引き出していく「グローイングアップ・ワイルド」、五感を使って自然を直接体験する「ネイチャーゲーム」などの資格をもとに立ち上げた「海のようちえん」。園児の自主性や創造力、自助意識を重視した独自のプログラムが話題を呼び、リピーターが後を絶たない。
幼い頃から生き物が大好きで、「大阪コミュニケーションアート専門学校」(現大阪ECO動物海洋専門学校、大阪市西区)の動物園・動物飼育専攻に入学。在学中の子供キャンプのボランティアやオーストラリアでの環境教育の実習を通して〝人と自然をつなぐ〟仕事に興味を抱き、卒業後の平成24年、NPO法人「ナック」などが指定管理者として運営する同センターに入った。
「幼児期に多くの自然体験をしてほしい」と、海のようちえんを始めたのは2年目から。別の施設で子供の教育キャンプに携わった経験を生かし、自分なりのプログラムを思い描いた。
「『危険』はだめだが、『冒険』はさせたい」。そのために大切なのは「自分の命は自分で守る」という意識を園児に持たせ、危ないことを自分で考え、単独行動などを絶対にしないよう伝える。
安全を第一に園児たちがカヌー、カッターボート、クルージング、釣り、海の生物観察などを体験。海水の塩でスナック菓子を作ったり、いかだを組み立てたりするプログラムも。カレー作りに熱中する園児もいるという。
自然体験で大きな力となっている学生ボランティアリーダーの育成にも力を入れる。環境や子供との交流が上手な人が増えれば、自然とうまく付き合える子供も増える。子供目線で行動するプログラム活動は、若い学生たちにも貴重な経験になっているという。
最初は年2回だった海のようちえんだが、3年目からは5回に増え、4年目には単発事業からクラブ事業に〝昇格〟。最近は定員25人とし、倍以上の園児が参加する。時には応募を断らねばならないほどの人気ぶりで、リピーターが多いのが特徴だ。
新型コロナウイルスの影響で、施設の閉鎖、園児~高校生を対象にしたさまざまな海浜プログラムの日程や内容の変更などを強いられた。「感染防止対策はもちろん、中止やキャンセル、日程調整などの対応に忙殺された」と振り返り、現在もコロナ対策には神経をとがらせる。
龍谷大大学院(京都市伏見区)の政策学研究科で地域リーダーシップやフィールドワークなどの研究に打ち込むほか、今月27日から母校の専門学校で「環境教育」をテーマにしたゼミの講師を務める。
学習や指導の場が増えることに喜びを感じ、同センターでは安心・安全をモットーに活動を続ける〝アグレッシブウーマン〟。「10年たってやっと、思うようなプログラムができるようになってきた。海洋センターを訪れた子供たちの目が生き生きと輝いているのをみると、やっててよかったと実感する」と目を細めた。 (高橋義春)
アウトドアインストラクターになるには
学歴や資格は特に必要とされないが、活動領域によって様々な資格を求められるケースもある。職業上、スポーツ関連の大学・専門学校を卒業すれば有利とされる。