知床観光船事故で何が 暗礁多い海域 座礁で沈没か

北海道・知床半島の海岸付近で安否不明者を捜索するヘリコプター=24日午後0時47分(共同通信社ヘリから)
北海道・知床半島の海岸付近で安否不明者を捜索するヘリコプター=24日午後0時47分(共同通信社ヘリから)

北海道・知床半島沖のオホーツク海で観光船「カズ・ワン」が浸水し、乗客乗員26人が安否不明となった事故は、これまでに現場周辺で10人の死亡が確認される大惨事となった。家族連れにも人気の観光ツアーで何が起きたのか。専門家は船に何らかのエンジントラブルが生じた後に座礁し、船体が損傷して浸水・沈没した可能性があると指摘。「運航会社の安全管理体制の調査が必要だ」とする。

カズ・ワンは23日午前10時ごろに北海道斜里町のウトロ港を出航後、午後1時過ぎに北東約27キロの「カシュニの滝」付近から救助を要請した。

海難事故に詳しい東海大海洋学部の山田吉彦教授は「エンジントラブルがあった後に流され、暗礁などに座礁して浸水したのではないか」と分析する。

注目するのは通報時間だ。運航する知床遊覧船のツアーは最長3時間。通報した午後1時時点で本来なら帰港しているはずだ。山田教授は「通報前にエンジントラブルが発生し、帰港できなくなっていた可能性がある」とみる。

網走地方気象台などによると、23日は現場海域には朝から強風・波浪注意報が出され、午前中に1メートル未満だった波の高さは午後には2~3メートルになっていた。現場は浅瀬が入り組む暗礁の多い海域だ。

こうした海域では数十メートル移動するだけで、突然水深が変わり、浅くなったりする。山田教授は、コントロールが利かなくなった船体が風や波で流され、暗礁などにぶつかった可能性が高いとみている。

一方、船舶安全機構理事の鈴木邦裕氏が指摘するのは運航ルートの問題だ。暗礁が多い海域でも陸から離れて航行すれば「座礁することはない」からだ。

知床遊覧船のツアーはヒグマなどの生態を海側から観察できることで知られている。鈴木氏は「観光客へのサービスのため、国に届け出ているルートよりも陸に近いルートを取っていた可能性がある」とする。

浸水したカズ・ワンは、昨年5月に浮遊物にぶつかり乗客3人が軽傷を負う事故を起こし、同6月には浅瀬に乗り上げる座礁事故を起こしたことが分かっており、今後は安全管理体制も問われることになる。

海難審判での弁護士役である海事補佐人の大貫伸氏は「悪天候だけで今回の事故は説明できず、何らかの人為的な原因がある。今後の調査のポイントの一つは、規定を守っていたかどうかだ」と説明する。

各船は、波の高さや風の強さに応じて出港を見合わせたり、運航途中でも帰港したりする基準を定め、国に届け出ている。現場周辺の漁船は事故当日、強風・波浪注意報が出ていたことを受けて出漁を断念していた。

「航行中に悪天候に変わった際の行動に違反がなかったか調査が必要」と大貫氏。さらに「今回事故を起こしたような小型船舶は、経験の浅い船長でも免許を取って運航ができる。トラブル発生後に人命救助のために必要な臨機応変の措置が取れていたかどうかも焦点の一つだ」とした。(荒船清太)

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