話の肖像画

谷垣禎一(23)異例の幹事長登板、「魔の2回生」苦慮

自民党大会で(手前左から)高村正彦前副総裁、安倍晋三元首相らと党歌「われら」を歌う =平成27年3月
自民党大会で(手前左から)高村正彦前副総裁、安倍晋三元首相らと党歌「われら」を歌う =平成27年3月

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《平成26年9月の内閣改造・自民党役員人事で、幹事長に起用された。総裁経験者が幹事長に就くのは初めて。当時の安倍晋三首相(党総裁)は、消費税率の引き上げ判断や安全保障法制の見直しなど、政権の行方を左右する難題を抱えていた。安定した党運営に向け、苦しい野党時代に総裁を務めた谷垣さんを党の要に据えた》


もう総裁もやりましたから、自分の政治生活はだいたい終わりだと思っていました。改造前に法相を務めたのも、安倍さんに「何かやってくれ」と頼みこまれたからで、もともとやるつもりはなかったのです。その後に幹事長を打診されるとは、全く予想していませんでした。

都内のホテルでひそかに会い、最初は「法相で最後のご奉公のつもりですので」「将来性のある方になさっては」としぶったのですが、あのときの安倍さんは集団的自衛権の行使を可能にするための法整備をするということで、かなり気合が入っていました。「いろんなことに目配りをしなければならない。ぜひお願いしたい」と言われ、引き受けざるを得なくなりました。


《就任後は週1回、首相官邸で安倍さんと昼食をともにして意思疎通を図った。首相動静に載る形を取ったのは、密な連携を党内にアピールするためだ》


安倍さんと(前任の)石破茂元幹事長は、何だか波長が合っていなかったですよね。せっかく与党に戻ったのに、あれでは収まるものも収まらなくなるのではないかと陰ながら心配していました。政治家ですから隠れて会って話をつけることもないわけではありませんが、総理総裁と幹事長は表に見えるところで頻繁に会うことも大事なんですよ。「私たちは常に腹合わせをしていますよ」という外へのメッセージになりますから。

昼食会では、かしこまった議題は設けず、よもやま話の中で党内の様子を報告しました。それまで安倍さんとはあんまり付き合いがなく、どんなことを考えている人なのかよく知らなかったのですが、いろんなことに思い入れがあってよく考えておられるんだなと思いましたね。メニューはソバやカツカレーなどいろいろでしたよ。


《同年12月の衆院選では、多数の新人議員が9割近く再選したが、金銭トラブルや不倫などのスキャンダルが続出し、「魔の2回生」と呼ばれた。現在は当選4回を重ね、閣僚や党三役に抜擢(ばってき)される議員も出てきている》


小林鷹之経済安全保障担当相や福田達夫総務会長らはなかなか立派ですよね。4回生から彼らを引っ張ってきた岸田文雄首相は、見ているところは見ているんだなと思います。難しいときでみんな大変だろうけど、頑張って伸びてほしいですね。

小林さんは、自民党が野党のときに実施した公募に応募してきてくれたんです。当時は在米日本大使館の1等書記官で、「日本の存在感が低下していて放っておけない。自分で役に立つならば」と、分厚い手紙をくれたんですね。帰国のおりに会ってみたら、なかなかしっかりしている。「こういう人がやろうと言ってくれるなら、まだ自民党ももつな」と思いました。


《党所属議員の失言も相次ぎ、谷垣さんは「野党気分が抜けていない」「与党議員の自覚が足りない」と憂慮していた》


野党の間に、言いたいことを言う楽しみを覚えた人もいたんです。まとめる責任がない分、解放感もある。与謝野馨元財務相は「とにかく治まっている状況をつくるのが政治」と言っていましたが、これは大切なこと。与党議員は言いたいことを言って全体をぐちゃぐちゃにしてはいけないし、説得や妥協をしてでもどこかでまとめなきゃいけない。ハチの巣をつつくような状況が続いてはうまくいかないし、完璧さや原理原則に固執していたらまとめられませんよね。(聞き手 豊田真由美)

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