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戦後国際秩序の源流へ 米英ソ3巨頭の野心と本音記した会談録「戦後の誕生」

「戦後の誕生」(中央公論新社)
「戦後の誕生」(中央公論新社)

ロシアによるウクライナ侵攻が長期化の様相を呈している。国連安全保障理事会の常任理事国でもあるロシアが戦後国際秩序を揺るがす中、第二次世界大戦終結前に行われた米国、英国、旧ソ連の指導者による戦争終結や戦後処理に関する会談を振り返る意味は小さくないだろう。

3月に刊行された『戦後の誕生 テヘラン・ヤルタ・ポツダム会談全議事録』(中央公論新社)は茂田宏氏ら外務省OBグループによる編訳。対立と妥協が繰り返される会談では、指導者たちの野心的な国益観や赤裸々な本音も垣間見え、飽きさせない内容となっている。

例えば、テヘラン会談(1943年11~12月)では、翌年に大統領選を控える米国のルーズベルト大統領が多くのポーランド系市民の「票を失いたくない」とし、調整が難しいポーランド国境問題などに距離を置くことに理解を求めた。

ヤルタ会談(45年2月)では植民地国や従属国の信託統治が議題に上がるや、興奮した英国のチャーチル首相が、英領土をひとかけらたりとも「競り売りの対象」にはしないと審議入りを拒否。その後、敵国の領域のことだと説明され、矛を収める一幕も。ポツダム会談(同年7~8月)では、ソ連のスターリン首相が日本側から戦争終結の仲介要請があったことを報告。条件などに「新しい点はない」として一蹴、米英側もそれに同意するシーンが短く記される。

日本に関する記述は少ないが、大国の指導者たちの思考回路や交渉術を理解する上で参考になる。国会議員をはじめ、国際政治に関心を抱く人々にぜひ読んでほしい。

ウクライナ侵攻では、軍事的中立の方針を維持してきたフィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請が現実味を帯びているが、国はなぜ他国と同盟を組むのか-を理解する上で有益なのが昨年12月刊行の『同盟の起源 国際政治における脅威への均衡』(スティーヴン・M・ウォルト著、今井宏平・溝渕正季訳、ミネルヴァ書房)だ。著者は国際政治理論の大家。原著の初版は1987年だが、その理論は今も説得力に富む。

「同盟の起源」(ミネルヴァ書房)
「同盟の起源」(ミネルヴァ書房)

同書は、諸国家が同盟を形成する理由の説明として、従来一般的だった勢力均衡理論に代わり脅威均衡理論を打ち出す。最強国ではなく、最大の脅威となる国に対抗するために同盟を形成する-というのがその要点。現在の国際関係を俯瞰(ふかん)する上で大変刺激に満ちた研究書だ。

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