ロシアのウクライナ侵攻から24日で2カ月。ウクライナ北部から撤退した露軍は4月下旬から東部制圧に向けた作戦を本格化させたが、ウクライナ軍も激しく抗戦。首都キーウ(キエフ)周辺での露軍の残虐行為の発覚により、一時高まった交渉による停戦実現の機運は霧散した。両国内では、停戦は東部での「決戦」で一方の敗勢が確定的になるまでは実現しない-との見方が支配的になっている。
「この戦争の結末を決めるのはテーブルではなく、戦場だ」。ウクライナのクレバ外相は19日、フランスのテレビ局のインタビューでそう述べ、外交交渉による現時点での停戦の実現に懐疑的な見方を示した。
ラブロフ露外相も22日、モスクワでのカザフスタン外相との会談後の記者会見で、4月中旬にウクライナに停戦案を文書で示したが、「回答がない」と明かし、「停戦交渉は行き詰まった。ウクライナは交渉を必要としないように見える」と発言した。
停戦交渉が停滞した背景には複数の要因があるとみられる。一つはウクライナの「善戦」だ。米欧から重火器や装備品などの供与を受けたウクライナ軍は露軍とも互角に戦えるとの自信を深めており、ウクライナは現時点で譲歩の必要に迫られていない。ウクライナは、戦争が長期化すれば、経済制裁下にあるロシアの戦闘を継続していく力は低下していくともみている。
露軍が撤退したブチャなどキーウ近郊の複数の都市で4月上旬、露軍に殺害されたとみられる多数の民間人の遺体が見つかったこともウクライナの態度を硬化させた。ゼレンスキー大統領は「交渉は困難になった」と対露姿勢の見直しを示唆。一方、プーチン露大統領は民間人被害を「虚偽」だと主張したほか、ウクライナはそれまでの停戦交渉での合意内容から立場を後退させた-とも非難した。
ロシアは現在、「独立」を一方的に承認したウクライナ東部ドンバス地域全域の「解放」が主要目標だと主張し、東部での攻勢を強めている。ただ、目標は現時点で部分的な達成にとどまっており、今後、さらなる大規模攻勢に踏み切る恐れが高まっている。
一方のウクライナ軍も、徹底抗戦して露軍に損害を強いる構えで、一部地域では反攻作戦も実施。一進一退の攻防が続く中で、停戦交渉が進展する可能性は極めて低いのが実情だ。