【ニューヨーク=平田雄介】国連のバチェレ人権高等弁務官は22日、ロシア軍が侵攻し一時占領したウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで、「処刑」するなどの違法な手段で民間人約50人が殺されたと声明で発表した。他の占領地で300人以上の民間人が虐殺された疑惑も調査している。バチェレ氏は「侵攻開始後の2カ月間、国際人道法は投げ捨てられた」と非難した。
バチェレ氏は、管轄する国連ウクライナ人権監視団(HRMMU)の現地調査の状況を説明した。300人以上が殺害された疑いがあるのは、北部チェルニヒウや東部のハリコフ、スムイなど。露軍が2月下旬から3月初旬に占領した。
ブチャでは、監視団員が話を聞いたほぼ全ての住民が親族や隣人らの死を語ったという。同氏は「実態を掘り起こすため調査を続ける必要がある」と述べた。
声明は、露軍が人口密集地や病院、学校、民間施設に対して「無差別攻撃を行った」と明言した。「戦争犯罪」の可能性があり、民間人60人が殺害された今月8日の東部ドネツク州クラマトルスクの駅への攻撃は「象徴的だ」とした。
病院への攻撃で医療が寸断された影響で、適切な医療を受けられずに死亡した人は少なくとも3000人いると推定。性的暴行の親告は75件あったという。
露軍は、地方公務員や記者、人権活動家を含む民間人を拘束し、拷問したり食べ物や水を与えなかったりしているという。
22日発表の国連データによると、殺害された民間人は子供184人を含む2435人。民間人の負傷者は子供286人を含む2946人。バチェレ氏は「軍隊の指揮官は、違反行為をした者が責任を取らされると戦闘員に明確にしなければならない」と訴えている。