ウクライナ侵攻の衝撃映像 心の健康に影響の可能性 子供たちのケアは

ロシアのウクライナ侵攻から逃れ、安堵した表情を見せるウクライナ人少女=9日、ポーランド(ロイター)
ロシアのウクライナ侵攻から逃れ、安堵した表情を見せるウクライナ人少女=9日、ポーランド(ロイター)

ロシアのウクライナ侵攻から間もなく2カ月となり、戦闘が激化する中、テレビや交流サイト(SNS)では、攻撃で破壊された建物やけがをした民間人といったショッキングな映像や写真が映し出されるケースも多い。こうした報道でストレスを感じ、心身に不調をきたす可能性もあるほか、成長期の子供への影響が気がかりという保護者も多いだろう。専門家は、心の健康を保つための工夫を呼びかけている。

3月中旬の夜、父親とテレビを見ていた大阪府に住む中学生の男子生徒(14)は「うわっ」と声を上げた。画面に映っていたのはウクライナの都市へのミサイル攻撃や、殺害された民間人の遺体や負傷者の生々しい映像。米議会で行われたウクライナの大統領のオンライン演説の途中で流れたものだ。生徒は「突然映ったので驚いた。本当に人が死んでいるんだなと思った」とその衝撃を語る。

父親は「日本のメディアでは放送されないシーンで驚いたのだろう」と受け止める。映像のせいか「しばらくは思い出していたようで、見る前に比べて死者の数などを気にするようになった」と振り返る。

SNSに氾濫

ウクライナ侵攻を受け、日本トラウマティック・ストレス学会は3月、「惨事報道の視聴とメンタルヘルス」と題した資料をホームページで公表。惨事報道は心の健康に悪影響を与える可能性があるとし、同じ内容を繰り返し見ない▽衝撃的な映像の視聴を避ける▽「ながら見」を控える-などの工夫を紹介した。

資料をまとめた一人で目白大の重村淳教授は「惨事報道は心を傷つけるリスクがある。何気なく目にした映像や画像が頭から離れないといったことが起こり得る」と指摘。情報入手にメディアは欠かせないとしつつも、「使い方を考える必要がある」と強調する。

災害に関するメディア報道が精神面に与える影響について詳しい公認心理師の新井陽子さんは、「SNSの普及で編集されていない生の情報が出回るようになった」とみる。こうした情報に触れないことが望ましいが、意図せず見てしまうこともある。中高生の場合は「不安を感じたり、正義感が怒りに結びついたりすることもある。子供の感情を受け止め家族で話し合うなどし、気持ちを落ち着けてあげることが大切」と話す。

親子で会話を

より幼い子供への影響を懸念するのは、大阪母子医療センター子どものこころの診療科の平山哲医師。幼稚園から小学校低学年程度の子供は、テレビで流れる映像と自らが体験している現実との違いを区別しにくいためだ。もし子供に、寝つきが悪い▽過剰にテレビを避ける▽不機嫌-など、普段とは異なる言動が見られたら、保護者は「大丈夫?」と聞いたり、抱きしめたりすることが大切といい、「親に支えてもらうことで、子供はとても安心できる」と訴える。

子供の不調を予防するには、映像が目に入らないようテレビをつけない、ラジオでニュースを聞くといった対策が効果的という。

不安や恐怖を感じた子供から「なぜ戦っているの?」「いつ終わるの?」などと質問されたら、どう対応すればいいだろうか。

国際的に活動する非政府組織(NGO)「セーブ・ザ・チルドレン」は3月、子供と「戦争について話すときのポイント」をホームページで公開。子供が話したり質問したりする時間をつくる▽子供の年齢に応じて説明する▽率直に話し安心感を生み出す-といった5項目を挙げている。

同団体国内事業部の赤坂美幸さんは「子供が年齢や発達段階に応じて物事を理解するには、会話が重要。大人が説明するときのヒントとして活用してもらえたら」と話している。(木ノ下めぐみ、藤井沙織、吉田智香)

惨事報道とストレス

米中枢同時テロ(2001年)やボストンマラソン爆弾テロ事件(2013年)では、当時の様子が報道されることで、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や鬱病の増加につながることが報告された。また、平成23年の東日本大震災では、津波の映像が繰り返し報道され、被災していない人も眠れなくなったり、気持ちが落ち込んだりするケースが増えたとされる。


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