北野武さんが小学6年生になった年の誕生日だった。何か買ってやるというから舞い上がった。ところが大きな本屋に連れて行かれ、買ってもらえたのは『自由自在』という参考書である。なにが自由自在だ、おいらには、不自由不自在だ…。
▼かなりの教育ママだった母親について書いたエッセーを、女優の高峰秀子さんは興味深く読んだ。自分の養母は正反対だったからだ。高峰さんが活字を読み、勉強することを徹底的に嫌った。「勉強なんかしなくったって、金さえあれば何でもできる」というのである(『にんげん住所録』)。
▼高峰さんの名エッセイストとしての名声は、松山善三監督と結婚してからの猛勉強の賜物(たまもの)である。さすがに今の時代、子供に勉強を禁止する親はいないはずだ。子供たちの足を引っ張っているのはコロナ禍である。